もくれんの映画と読書日記

趣味のかたよった読書と映画鑑賞の日記です。

読書日記(ミステリー小説)

まるで映画「頬に哀しみを刻め」の壮絶バイオレスに酔った

2023年のミステリーで話題だった海外ミステリー。謎解き系ではなく、こんな感じのゴリゴリのバイオレンスは普段あまり読まないので、読み切れるかなあという不安はすぐにどっかへ行ってしまった。 頰に哀しみを刻め (ハーパーBOOKS) 作者:S・A コスビ…

小説と映画で「64」の世界再び!

この映画が公開されたのが2016年ということで、もう7、8年くらい前になるのだけど、出演者の顔ぶれがとにかくすごいので、見たいとは思っていた。 64-ロクヨン-前編 通常版DVD 佐藤浩市 Amazon 見よう見ようと思いつつ、その前に原作を再読しておさらいをし…

キャラクターだけで腹いっぱい!刑事ドラマ感に溢れた「リバー」

1人1人のキャラクターが強烈なので、頭の中で俳優さんとか有名人を当てはめて読んでいくと楽しい。 リバー (集英社文芸単行本) 作者:奥田英朗 集英社 Amazon リバーとは栃木県と群馬県を流れる渡良瀬川。その河川敷で若い女性の死体が発見される。 十年前…

SFみたいな特殊設定のミステリー「方舟」

しっかり「やられたあ!」感を満足させてくれたミステリー。 方舟 作者:夕木春央 講談社 Amazon 軒並み評価の高い作品だったので、期待値を上げ過ぎないように挑んだが、それでもしっかり楽しませてくれた。 外からの往来が絶たれた状況で事件が起きるクロー…

「完璧な家」でラストはざまあみろという気持ちになる

読んだとたんに「これは絶対映像化されるな」と思ったサイコサスペンス。 完璧な家 (ハーパーBOOKS) 作者:B・A・パリス ハーパーコリンズ・ ジャパン Amazon ジャックとグレース夫妻の家で催されたホームパーティーの場面から物語は始まる。弁護士でハンサム…

読みだしたら止まらないというのは嘘じゃなかった「彼は彼女の顔が見えない」

またまた謎かけのような題名で。前作「彼と彼女の衝撃の瞬間」同様、特にストーリーとは関係ないんじゃないかと思ったが、「ああそういうことか」とすぐにわかった。彼は相貌失念という脳の障害を持っていて、人の顔が認識できないのだ。 彼は彼女の顔が見え…

かわいいクマとクリスティーの共通点は「パディントン」

パディントンというのが、駅名とは最近まで知らなかった。女王陛下とお茶したあのかわいいクマさんのお名前なんだと、ずっと思っていた。なんせ本も読んだことなかったんで。 パディントン発4時50分 (クリスティー文庫) 作者:アガサ・クリスティー,松下 祥子…

ブラックなどんでん返しがクセになる「#真相をお話しします」

私たちの「今」に向かって強烈な皮肉をこめた読む人を選ぶであろうミステリー短編。 #真相をお話しします 作者:結城真一郎 新潮社 Amazon 「マッチングアプリ」「リモート飲み会」「YouTuber」などを題材にしているので、おじさんおばさん、加えてじーさん…

子供たちが活躍するミステリーって確かに面白かった「ロンドン・アイの謎」

子供たちが活躍するミステリーってこんなに面白かったなあ、というのを再認識させてくれる本だった。 ロンドン・アイの謎 作者:シヴォーン・ダウド 東京創元社 Amazon 12歳の少年テッドがパパ・ママ・姉のカットと暮らす家に、ある日叔母さんと従兄のサリム…

新しいタイプの読者への挑戦「ポピーのためにできること」

分厚い文庫を手に取って「ヒマかかりそうだな」と思ったけど、杞憂に終わる。あっという間に読めた。 ポピーのためにできること (集英社文庫) 作者:ジャニス・ハレット 集英社 Amazon もちろん面白いというのが第一なのだが、この小説はすべてがメールのテキ…

すさまじい勢いで読んだ面白さ「裏切り」

凝りすぎる題名は嫌だけど、こちらはもう少し凝った方が良いんじゃないかと言いたくなる愛想のない題名。 裏切り 上 (創元推理文庫) 作者:シャルロッテ・リンク 東京創元社 Amazon そう思ってしまうほど、題名の愛想の無さとは裏腹に面白かったのだ。怒涛の…

かつての名作をもう一回読みたくなる「硝子の塔の殺人」

ミステリー好きのための、新本格好きのための――という触れ込みで評価も高い。これは面白そうだってことで読んでみた。 硝子の塔の殺人 作者:知念 実希人 実業之日本社 Amazon ミステリ好きの大富豪が建てた硝子の塔。そこにさまざまな職業のクセの強いメンバ…

いろんな意味で引っ越しが慎重になる日常系ミステリー「Iの悲劇」

題名だけで、怪しい密室殺人の本格推理小説と勝手に思いこんでいた。実は日常系の連作短編小説でした。 Iの悲劇 (文春文庫) 作者:米澤 穂信 文藝春秋 Amazon 「Iの悲劇」の I は、Iターンのことで、6年前に廃村となった集落に、新しい住人を呼び込み村を甦…

解かれないために作られた難解暗号ミステリー「敗北への凱旋」

子供の頃、怪人四十面相で黄金髑髏の暗号に出会って以来、暗号ミステリーには目がないが、日本で最も難解な暗号の1つと言われているこちらの名作に挑んでみた。 敗北への凱旋 (創元推理文庫) 作者:連城 三紀彦 東京創元社 Amazon 挑むも何も、いつも暗号ミス…

積読の中から一冊!87分署の刑事さんたちと久々に「電話魔」で再会

ずーと昔、まだ警察小説というものをさほど読んだことがなかった頃、気に入ってしまった87分署シリーズ。 「警官嫌い」にすっかり感動し、以後何作か読んだ。で、読もうと思い買ったまま積読されたまま年月が過ぎた本もいくつか。その中の「電話魔」で、87分…

今読むとものすごくリアルだ「戦場のコックたち」は

今読むとものすごくリアルだ。 戦場のコックたち (創元推理文庫) 作者:深緑 野分 東京創元社 Amazon 歴史ミステリーが好きなので、これもまた太平洋戦争を舞台にした連作ミステリーという形だけど、いくつものレビューにもあったとおりミステリー要素は薄い…

籠城ミステリーがすごく斬新「黒牢城」

この小説の中で、討ち取った首を綺麗にしてあげるという女たちの役目が出てくるのだけど、ふと、谷崎潤一郎の「武州公秘話」を思い出した。 黒牢城 (角川書店単行本) 作者:米澤 穂信 KADOKAWA Amazon 首に化粧をほどこすというのを初めて知ったのが、その小…

軽いイラつきを覚えながら旅に出たくなる「ホテル・ピーベリー」

最近読んだ本が立て続けに自分にとってハズレばっかりだったので、本屋さんで見かけた間違いない作者の本を手にとった。 ホテル・ピーベリー<新装版> (双葉文庫) 作者:近藤史恵 双葉社 Amazon 近藤史恵さんの作品は、やはりビストロシリーズが一番好きで、…

主人公のまっすぐぶりが可愛い「自由研究には向かない殺人」

ミステリー小説も行きつくとこまでいった感じがする、もうどんな事件もネットが解決しそうだ、みたいなことを以前誰かと話したことがあるんだけど、まさにそれをイギリスの女子高生ピップがやってのけてしまった。 自由研究には向かない殺人 (創元推理文庫) …