もくれんの映画と読書日記

趣味のかたよった読書と映画鑑賞の日記です。

「Summer of 84」は映画そのものがどんでん返し

何を書いてもネタバレになりそう。

 

サマー・オブ・84(字幕版)

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  • 発売日: 2019/11/20
  • メディア: Prime Video
 

 

これだけは言ってもいいと思うが、スカっと爽やかな気分で終わりたい人は絶対見ない方がいい。

けど、後味が悪いかというと、そんなこともないような気がする。「ヘレディタリー」なんかに比べればよっぽど普通。

 

題名からして、80年代を舞台にした少年たちの話。みなさん口コミでも書いていらっしゃるように、まず思い浮かべるのは「スタンドバイミー」。少年たちのキャラ設定を見ても完全なオマージュ。

 

Summer of 84 [DVD]

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  • 発売日: 2018/09/04
  • メディア: DVD
 

 

あるアメリカ郊外の町で、少年たちが行方不明になる事件が起こり始める。主人公の少年は、隣人である男の行動に疑問を持ち始め、彼を連続殺人犯として監視することに。半信半疑ながらも協力する仲間たち。なんせその怪しい男は警官なのだ……。

 

彼らの服装や会話がことごとく80年代しているが、映画の場面やストーリーそのものが「どこかで見た感」を感じさせる。何の映画に似ているのか、どんな映画と似ているのかは思いつかないが、「あ、この感じありそう」「この設定ありがち」なのだ、常に。

 

80年代は数々の名作ホラーが誕生し、近年続々とリメイクや続編が公開されている。ある意味1つのホラーのパターンが形作られたような感じ。

 

ホラー映画は予測不能とはいいながら、「絶対にこうなる」「絶対にこうにはならない」という安心感や定番みたいなものが存在する。だから気を抜くべきところやラストホッとして終わる感じは共通。

 

SUMMER OF '84/180G VIN [12 inch Analog]

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  • 発売日: 2018/11/23
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それらのパターンをことごとくひっくり返したのがこの映画。気を抜くところがまるでない。誰が犯人なのかわからないのは当然のことながら、どんな展開になっていくのかまるで予測不可能。だからラストがああなるのは必然的なのだ。

 

残忍な場面などほとんど無いに等しいのに、妙な生々しさがあり、変にリアルで怖い。このリアルさは、スマホ1つで吹っ飛ぶリアルさだ。ここにスマホ1つ放り込めば、まったく違う展開と雰囲気の映画になってしまうだろう。

 

何でもできる、何でもわかる怖さと、何もわからない、自分で動かなければ真実を発見することはできない怖さ。そこから膨らみまくる想像力は勇気と危険のリスクを伴う怖さ。変に怖いリアルさを感じるのは、私たちの脳がもうそんな怖さを忘れてしまいかけているからに違いない。

 

現代の現実感を丸ごとひっくり返し、ノスタルジックで奇妙な恐怖感を味わわせてくれる不思議なホラーだ。