またなんとも薄気味の悪い映画だ。
前作「ゲットアウト」は、“黒人”や“人種差別”というテーマが前面に押し出され、
それを刷り込まれてのホラーサスペンス、プラスのどんでん返しだった。
今回のテーマは“ドッペルゲンガー”
もう一人の自分。
幼い頃、少女は遊園地のミラーハウスで自分と瓜二つの人間に出会ってしまう。
その時の恐怖がきっかけで、しばらく言葉を発することができなくなるというトラウマに。
物語は、彼女が成長した末に手に入れた幸せな家族の夏休みから始まる。
明るく優しいダンナ、ちょっと生意気な娘、まだまだ幼さが残る息子。
ビーチハウスで夏を過ごすことにしたファミリーは、友人一家と浜辺のリゾート地で合流することになる。しかしその場所は、彼女がかつてドッペルゲンガーと遭遇した忌まわしき場所だった。
その日の夜、ビーチハウスの外にじっとこちらを見つめて立っている4人の人間がいることに気づく。それらは皆、自分たち家族とそっくりなドッペルゲンガーだった…
ホラーというよりサスペンススリラーといった方がしっくりくる。
幽霊や化け物のように消えてなくなる存在ではなく、普通に実体のある“どこかおかしい”人間たちの怖さ。
ものすごく凝ったストーリーでもないのに、ものすごく薄気味悪いのは、ひとえに俳優さんたちの演技の凄さ。主役の女性のドッペルゲンガーのしわがれ声は、もうその日一日耳について離れなかった。
ぶっ飛んだ表情の迫力もスゴイスゴイ。
でももう一人のイカれた自分を演じるって楽しいだろうなと思ったりする。特に狂気に満ちたもう一人の自分なんて、誰でももっていそうな感じで。
ドッペルゲンガーの持つもう一人の自分というテーマは、そんなふうに自分の中のもう一つの存在という解釈にとらえられることが多いけど、この映画のテーマはそこではない。そこがまた面白いところ。
今の幸せは、不幸と悲劇との表裏一体で存在するもの。という解釈。
まるで、地球規模の悲劇に見舞われている、今の私たちの状態そのものではないか。
当然のこととして堪能してきた平和と贅沢を根底から覆されてしまった私たち。
この物語の主人公たちのように戦えるだろうか。
いろんな意味で怖い映画だ。
それにしても、人類を脅かすのはターミネーターだと信じていたのに、まさかバイオハザードだったとは…。