野球ファンとしては、やはり見ておかなければなるまい。
メジャーリーグが舞台の映画は明るく華やかな表舞台のぶっ飛んだ話が多いイメージだけど、これは地味な裏側の話。
メジャーリーグの中の極貧球団「アスレチックス」は、いい選手を育てても、金の力でどんどん有名球団に引き抜かれていく。
もはや貧乏球団が勝てる術はないと落胆していたジェネラルマネージャーのビリーは、“セイバーメトリクス”というデータ野球を取り入れてチーム作りを始める。
選手の評価を出塁率などのデーターで判断し、格安の選手たちを取り入れていく。必ず反対する古参の連中との確執、他球団との選手の売り買いの様子は見ていて飽きない。長い時間にも関わらず、退屈する間がなかった。
たぶん、プロ野球に興味のない人にはいまいち――どころかさっぱりだったろう。プロ野球が好きでも、自分の好きな球団の勝ち負けだけで、他の球団のことはどうでもいいタイプのファンにも絶対評価は得られなかったと思う。
この映画に華やかさは無いからだ。結果を言うとビリーの試みを功を奏する。そのあたりは劇的なのだけれど、バリバリのエンターテインメントさは感じない。それはやはりこれが現実にあった話であるというところの、シビアなお金の話に終始するからだ。
それにしても、メジャーリーグのゼネラルマネージャーと日本のそれとは、絶対違うものなのだろうなあと思った。ビリーの一存で選手をバンバン首にし、監督さへもだまらせてしまう権限と、それに伴う責任感と根性の強さがあるとは思えない。
日本の場合(もちろん一概には言えないけど)、そんな権限を持つ者は、もっと違うところに存在するように思う。
お金と経営、生活の現実をプロ野球という夢の世界で見せつけられる話ではあるが、ラストはやはり「お金じゃないよ」というところに持っていくのが、アメリカっぽいなあという感じ。
「ほんとにあった話?!」と驚かされる内容だけど、映画のラストの字幕だけで報告されたビリーの選択。冒頭の字幕「人はプロ野球に夢をみる」がここでドーンとこたえてくる。