“禁じられたベストセラーの映画化” なんてことを公式ホームページに書かれていたりすると、見ないわけにはいかない。
ハロウィンの夜、3人の仲良し少年少女たち(中学生?高校生?)は、いじめっ子にいつもの仕返し作戦を試みる。しかし返り討ちに合い逃げ惑っているところを、1人の青年(高校生?)に救われる。
彼らは意気投合し、町で幽霊屋敷として名高いべロウズ家を探検することに。そこで発見したのは、べロウズ家の娘サラが書いたとされる物語集。彼女は写真すら封印されるほど謎に包まれた存在だった。
物語好きの少女ステラは、喜んで本を持ち帰り読んでみる。怪談集ともいえる奇妙なその物語を読み進めるうちに、ラスト空白のページにたどりつく。
しかし、真っ白な紙面に突然浮き上がってきた赤い文字…。本が勝手に物語を書き始めた…。
本はこうして次々に短編物語を書き進めていくのだが、その主人公たちが実際にサラたちの仲間。そして予想どおり物語どおりの展開で彼らは順々に怪奇現象に見舞われていく――という展開。
原作となった禁じられたベストセラーというのは、実は児童書。ということで、そこまでおぞましいシーンはないしドロドロした感じはない。むしろ、ITやスタンドバイミーのような爽やかさすら感じる。
ただ…変に怖い。
高度な特撮のなせる技ということもあるし、恐怖の実体がじわじわ近づいてくる感がとてもうまい。
チャックが対面する化け物なんて、明るいところでみたらかなり間抜けな感じの化け物なのだけど、あの状況に自分が置かれたらきっと気が狂う。
映画の中で、「あ、この話聞いたことがある」「子供の頃聞いてとても怖かった」という登場人物たちのセリフが出てくるが、原作となった本は都市伝説的な内容を集めた感じの物語集だそうだ。
1980年代に出版されたもので、健全な子供たちを恐怖のトラウマにさせる邪悪なものとしてとらえる風潮もあったのだろう。
その辺から来た禁じられたベストセラー。
でも子供たちは禁じられたものが大好き。ということでベストセラー。
すぐに思いついたのが、「学校の怪談」
あんな感じの短編集だったのではないかな。
古いところでいえば「口裂け女」「トイレの花子さん」みたいな、あんな感じの都市伝説や民間伝承的な怖い話を原作にしてアレンジした映画といった感じ。
今から見ると比べ物にならないほど、かわいいとさえ言える伝説たちだが、この映画の化け物たちは、驚かせるだけでなく、相手を容赦なく殺す。ある意味とても現実的な恐怖といえる。
いろんなものがいっぱいいっぱいになった今の世の中で、どんなにドロドロした物語よりも、どんなにおぞましい怪物よりも、子供たちも含めみんなが怖いのは、容赦なく何のいわれもなく殺される恐怖。
江戸時代の妖怪たちは、実際にあった出来事や現象がモデルになったとされているが、化け物たちはその時代を映し出すというのは、確かにいえると思う。
となれば、令和の「百鬼夜行絵巻」に書き加えられるのは妖怪“コロナ”か――。
なんて、ちょっとあざとい結末だな。
本当に怖いものは、この映画の結末。
べロウズ家のサラはなぜ封印されたのか?
なぜ怨霊になったのか?
一番邪悪だったのは誰なのか?
そして、もう1つ意味深なものがこの映画には挟み込んである。
ところどころ出てくるニクソン大統領の映像と演説。
ベトナム戦争終結宣言を出したニクソン。
映像が意味するものは希望なのかな?
理不尽な恐怖と戦う子供たちにさりげなく与えられた、わずかな希望なのかな…。