もくれんの映画と読書日記

趣味のかたよった読書と映画鑑賞の日記です。

自分だったらどうなってしまうだろう――「パッセンジャー」と「CURE」

「自分だったらどうするだろう」と考えさせられる映画や本に出合うことがある。
でもこの2本についていえば、「どうするだろう」なんて余裕かましていられない。

「自分だったらどうなってしまうだろう」

 

パッセンジャー

 

パッセンジャー (字幕版)

パッセンジャー (字幕版)

  • 発売日: 2017/06/28
  • メディア: Prime Video
 

 

未来の大型旅客宇宙船。移住地である星に着くのは120年後。
その間、乗務員と乗客の5000人は冬眠状態で年をとらないまま歳月を過ごす。

しかしその宇宙船に惑星が衝突。機器の故障により、冬眠装置が異常をきたし、1人の男性が目覚めてしまう。

到着まで、まだ90年以上。冬眠装置に戻ることはできない。
この時点で彼の運命は決まってしまう。宇宙船の中で、たった1人で人生を送る。

1年をバーテンダーのロボットと共に、1人っきりで乗り切った彼だったが、当然のことながらあまりの孤独に耐えきれず、すさんでいく心…。


そんな中、眠り続ける乗客の中に美しい女性を見つける。
彼女を起こせは、1人っきりの孤独から逃れられる……。
しかしそれは同時に彼女の人生を奪うことになる。

 

 

 

自分だったらどうするだろう――というより、
自分だったらこの一年の間にどうなってしまっていただろう。
きっと狂ってるだろうな。
いや、きっと片っ端から起こしていきそうだ。

彼は非常に理性が強い。しかしそれでも究極の孤独に耐えきれず――ってことになるのだけど

 ストーリーもさることながら、この映画の見どころはすべての場面が、ほぼ2人というすごさ。にもかかわらず退屈しないのは、舞台である宇宙船の中の居心地の良さ。自分もいっしょに旅している気分になれる。ほんとに。

そして宇宙の映像がものすごく美しい。これ映画館で観たらきっと迫力満点だろう。
加えて、ジェニファー・ローレンスの抜群のスタイルはため息もの。

彼の立場だったら、彼女の立場だったら、どうなってしまっていたか。
あまりにも理不尽な運命を、受け入れることができるだろうか。
人の生き方って、充実した人生って何だろう――。

 

CURE

 

CURE [DVD]

CURE [DVD]

  • 発売日: 2016/03/25
  • メディア: DVD
 

 

こちらはサスペンススリラーというべき邦画。
この狂気の世界もすごい。

残忍極まりない連続殺人事件。
とは言え、犯人はすぐに捕まり、自白もする。共通点がまったく無い中、唯一共通しているのが、死体に残されたXの形に切り裂いた傷。

犯人たちは自白はするが、動機がよくわからない。なぜXに切り裂いたのかも覚えていない。そんな犯人たちが事件を起こす前に会った、共通する1人の人物がいることを刑事が突き止める。

記憶障害のその青年は、のらりくらりとした態度と会話でまわりの者を翻弄する。しかしこの彼の独特の話術に、恐ろしいからくりが潜んでいた――。

 

この映画が奇妙だなあと思うのは、細かい説明がされないところ。
殺される人は被害者であって、被害者でないところ。被害者は犯人になってしまった普通の人々なのだが、彼らの人生もどんなふうに生きていたのかも、詳しく語られない。

だから、なぜこの人を殺してしまったのか、見ている側には明かされない。
しかしなんとなく、わかるのだ。それがとても怖い。

日々の生活の中で、身近にいるイラつく相手や不満なことは普通に誰でもある。でも理性的な私たちは、そんなことぐらい押さえて生きることができる。
しかし、その部分を見透かされ、引き出され、狂気を植え付けられたら――。

 

 

自分だったら、
もしも自分がこの事件の犯人になってしまったら、自分はどうなってしまうだろう――と考える。自分が刃を向ける相手はいったい誰なのだろう。
心の奥に潜んでいる、自分でも気づかない悪意は何に向けられるのか。

 

それにしても、次第に狂気を帯びていく感じの役所広司の刑事が魅せてくれる。
自分の中で、役所さんの一番は大河ドラマ織田信長役なのだけど、「日本のいちばん長い日」の迫力もすごかった。

ラストの意味深な終わり方も含めて、いろいろと自分で想像が楽しめる奇妙な映画。

 

 

 

極限状態を体感させてくれる2本の映画で、自分の深淵を覗いてみるのもいいかも。