若を守るため、悪い指導者を成敗するため、復讐を遂げるため、民衆を救うため、地球を守るため――。
1つの共通する目的に向かって、仲間とともに戦い、自らを犠牲にして後をたくしていく――。
そんなストーリーは、なぜかみんなとても好き。特に日本人は、遺伝子をくすぐられる。戦国時代や幕末や忠臣蔵は、なんだかんだ言っても見てしまう。
コロナでがんばるそんな日本人の遺伝子を久しぶりに目覚めさせてくれたのが、鬼滅なんだろうけど。
で、「激突」を数十年ぶりに見た。
千葉真一のアクションものはほぼ見たことがなかったので、当時、と言っても見たのは数年後のテレビ放送だったのだろうけど、かなり衝撃的で惹きこまれたのを覚えている。
ストーリーは単純で、ご乱心した将軍家光が、なんと我が子の命を狙う。送り込まれる刺客たち。対して、幼い若君を命をかけて無事江戸城に送り届けるというのが、緒形拳率いる侍たちの役目。
逃げる!逃げる!闘う!闘う!
そしてバトンをつなぐように、わが身を犠牲にして敵を倒していく仲間たち。
正直突っ込みどころは満載だ。でも、1980年代の邦画に特撮のダメだしするのはバカげている。
見るべきは、作り物に対して日本映画が仕掛けた“本物”の迫力だ。
爆発、落馬、崖からのダイビング――。
千葉さん率いるアクションとスタントのプロたちの体を張った壮絶な活劇。
そしてスピーディーさと視覚で楽しませる殺陣(たて)の迫力。
キアヌ・リーヴスやタランティーノにオーマイガー!と言わせた千葉師匠の実力炸裂。
実際のところ、一番カッコよくあるべき“それぞれの死に場面”が、作りものにせざるを得ない分、一番偽物っぽくなってしまう。
当時、ヒーローたちの中で簡単に死んでしまう若き織田裕二の死に方が、ちゃちっぽく感じたが、今みると一番リアルでカッコよく見えてくる。
プラス、あえて死に際を見せなかった緒方リーダーも引き立つ。
馬も人も怪我しまくってんじゃないのか、ヘタすりゃ死んでんじゃないのか、と言いたくなるほどの馬と人を酷使している映画として、いろいろ意見もあった映画だけど。
日本の時代劇映画としては、歴史に残るものではあると思う。
それにしても、このパターンの話どうしてこんなにカッコイイのかな。
たとえば、スターウォーズの「ローグワン」なんてこのパターンだ。
カッコいいんだけど、なんか悲壮感が伴って、あんまり何回も見たいと思わない。
人によるとは思うけど、この差は何なのかな。
侍や忍者たちは、悲惨だし、理不尽だし、ある意味残忍なんだけど、悲壮感を感じない。
若君が緒方リーダーに言うセリフ。
「余が生き続ければ、我らの勝ちなのだな」
いっしょに見ていた鬼滅ファンの20代の娘が、
「あー、なんか既視感~!」
と喜んだ。