もくれんの映画と読書日記

趣味のかたよった読書と映画鑑賞の日記です。

悪いヤツにも好きな音楽はある「ベイビードライバー」

おしゃれだなあ
というのが、まず第一の感想。

 

 

映画はストーリーだけじゃないというのを、改めて認識させてくれる映画。
昨今流行で違法のファスト映画じゃ絶対楽しめないこと間違いなし。

 

通称ベイビーと名乗る青年は、犯罪組織の逃がし屋。
冒頭から、ipodに合わせてノリノリ状態で車の中で強盗犯たちの仕事を待つベイビー。

こいつはちょっと危ないヤツなのかな
とみていると、仕事を終えて逃げてくる犯人たち。
彼等が車に乗り込んだ瞬間、ベイビーのスイッチが入る。

 

音楽に合わせ、驚異のドライビングテクニックで逃走する車。
パトカーとの壮絶なカーアクションは、気持ちいい以外の何ものでもない。

 

逃走完了し、コーヒーを買いに使い走りさせられる間もノリノリで歩いている。
このオープニングがまたオシャレな造り。
とにかくベイビーは、ずーと耳から音楽を離さない。

 

この映画の主役はずばり音楽。
といってもミュージカルじゃない。
物語に合わせて音楽が流れるというより、音楽に合わせて物語が展開しているような感じさえ覚える。
拳銃音ですら音楽に合わせて発射されることに驚き。


ベイビーがなぜずっと音楽を聴いているのか、
彼はなぜこんな犯罪組織にいるのか、
最初の段階では、いったいこの子どういう人物?
と言う感じでつかみにくい。

 

実は強盗犯たちにとっても同じ。
中には小ばかにしたような彼の態度にイラつくものも…

 

この映画がとても爽やかに感じたのは、
登場人物たちの持っている訳ありでしんどそうな過去がいっさい表に出てこないこと。

特にものすごい日々を送ってきたであろうベイビーと、里親のじーちゃんジョーの明るい関係がとてもいい。仲良しという言葉がぴったりの2人。ジョーの前でだけ素直な表情になるベイビーがかわいい。

 

そして、ジョー以外にも笑顔を見せる相手が現れる。
ダイナ―で働くデボラ。このリリー・ジェームスが可愛すぎる。
高慢と偏見とゾンビ」のあの最強ねーちゃんはどこにいったんだ。

 

ストーリーは単純で、ややこしい逃がし屋の仕事から逃れ、デボラとの幸せな日々が訪れるはずだったベイビーだが、そううまくいくわけがない――

 

 

 

 

誰にだって好きな音楽はある――。
強盗犯たちでさえ好きな音楽を語る時、口ずさむ時、ノリノリでいい表情を見せる。
音楽は早送りじゃ楽しめない。
今この時間を彩ってくれるのが音楽。

 

ワクワクしながら見入ってしまった2時間弱。
ストレスと疲れとおぞましい湿気の中、爽やかな時間をありがとう。
エドガー・ライト監督。
またよろしく。