子供の頃、だまし絵のような変なお屋敷が本当にあると聞いて心ときめいた。
行き止まりの階段、床にある窓。開けたら落ちてしまう二階の壁に取り付けられているドア。
ぜひ見てみたいと思った。
もしかして、あの時聞いたのはこのウインチェスターハウスのことだったのかもしれない。
アメリカに実在するウインチェスターハウスと、そのエピソードを映画化したのがこの作品。
幽霊屋敷として有名なので、当然のことながらホラー。
38年間もの間、24時間体制でとりとめのない部屋の増築を繰り返し続け、迷路と化した奇妙な屋敷。
この家の持ち主であり、この狂気めいた行動を起こしてきたのは、1800年代に夫と娘を相次いで亡くしたサラ婦人。
彼女の夫は銃器メーカーのウィンチェスター社の社長。
夫の死後、サラは残された財産をつぎ込んでとりつかれたように家の建築にいそしんだ。その理由が映画のストーリーの軸になっている。
その理由とはズバリ、自社のライフル銃により命を奪われた霊魂の居場所を作るため。
まさに幽霊屋敷そのもの。
実際に怪奇現象もいろいろと報告されているのだとか。
今や立派な観光地となっているようで。
狂気じみた未亡人サラの役を、REDの壮絶かっこいいおばちゃんヘレン・ミレンが熱演。
いい味出してる。
だから正直、ちょっともったいない部分も。
この映画、評価はあまり高くない。次から次へと化け物が出てくるわけでもないし、ハラハラドキドキのスリルも特にない。
精神科医の男性が、サラの精神鑑定を会社から依頼されて滞在することになり、彼が体験するホラー現象が中心なのだが、彼自身も銃に撃たれた過去があり、物語に関わってくる。
でもそこのところがいまいち見ている方に伝わりにくい。亡くなった奥さんとの顛末や思い入れを、もっと前半に視聴者にすり込んでほしい。
ストーリーじたいは面白いのに、ラストの奥さんの幽霊とのやりとりがなんか唐突すぎて、気持ちが入っていけない。
正確も変にやさぐれ感出さないで、落ち込み状態で生きている設定の方がよかったのではないかな。サラの身内の存在もなんかインパクトに欠ける。
などなど突っ込みどころはそこそこあるけど、私はこの映画けっこう気に入った。
なんせ家が素敵すぎるもの。ホーンテッドマンションぽい。インテリアもいちいちいい感じ。夜、あんなおしゃれなランプを持って家の中を歩いてみたい。
外観もそうなのだけど、テーマパークのお屋敷っぽい。
本物のウィンチェスターハウスのへんな部分も、けっこうそのまま作ってあるので、なんかワクワクする。
子供の時に、いつか見てみたいと思っていた憧れのお家を映画を通して体験することができて、じゅうぶん楽しかった。