もくれんの映画と読書日記

趣味のかたよった読書と映画鑑賞の日記です。

異能なアンソニー・ホプキンスを見ずにはいられない「ブレイン・ゲーム」

アンソニー・ホプキンスが異能の人物を演るとなれば、見ないでは気が済まない。

 

 

娘を病気で失い、妻とも別居中で失意の中で暮らしているアンソニー・ホプキンス演じるクランシー博士は、元同僚のジョーの訪問を受ける。

 

ジョーは刑事であり、彼はアナリストで医師のクランシー博士に事件の分析を依頼しにきたのだ。その事件とは、首の後ろを一突きにして殺す連続殺人事件。(まさに必殺仕事人の技)

 

被害者の共通点も無く、捜査に行き詰ったジョーがクランシー博士を頼ったわけは、彼が持つ特殊な能力だった。クランシー博士には未来のことが見えるのだ。

 

ジョーの熱意に負けて協力することになったクランシー博士。
しかしジョーの相棒キャサリンは、超能力に懐疑的。
とはいえ、さっそくその能力を発揮して被害者の見えない共通点を見つけだし、キャサリンの気持ちも変化していく。


順調に進んでいた捜査だったが、クランシー博士の態度が突然変わり、仕事を投げ出す。彼が見たものは、自分に向けてメッセージを送る、自分を遥かにしのぐ能力を持った超能力者の犯人の存在だった。
確かに「勝てるわけがない…」

 

超能力ものとしては珍しくないストーリーなのだが、やはりアンソニー・ホプキンスの存在感は上等の文鎮みたいに重さ抜群。

 

クランシー博士が頭の中で見る映像がこの映画の見せどころの1つ。
いきなり序盤で、初対面のキャサリンが血だらけになって目を見開いている顔のアップで、「おっ」とこちらは気持ちをつかまれる。
以後、キャサリンを見るたびに「この人死ぬのかな」と常に過り、思うつぼにハマっていく。

 

現実と頭の中の場面が入り乱れていく状況の映像は、なかなか面白い。
が、正直犯人を追い詰めていくまでの前半は緊迫感があるのだが、けっこう犯人はすぐに正体を現し、そこからは博士と犯人の能力の戦いとなっていく。

といっても、スキャナーズのような凄まじいものではなく、死についての哲学的な問答になったりして、そのあたりがスピード感とスリルを求めるとするならば、今ひとつ物足りない。

 

博士の持つ能力はとても残酷なものであることがわかる。
この映画のテーマとなっている死について永遠に繰り返された疑問は、いくら語ってもいくら考えても答えは出ない。
問われ続けている問題は今さらという気もする。


だからまあ単純なストーリーの映画だったなあという感想で治めようと思っていたが、
頭の片隅で、ずっと昔亡くなる前に朦朧とした意識の中で、笑ってくれたおじいちゃんの顔がふいに浮かんだ。

 

けっこうB級っぽい映画なんだけど、アンソニー・ホプキンスという上等な文鎮は、やっぱりずっしりと何かが心に重い。