世界中を驚かせ、賞も多数受賞した話題のデンマーク映画。
舞台になるのは緊急通報室のみ。
電話による声と音のみで事件を追っていくという異例のサスペンス。
緊急通報のオペレーターであるアスガーは元刑事。
訳ありでやりたくない仕事をやってます感を充満させて電話を受けている。
「くだらない通報多いんだなあ~どこの国も大変なんだろうなあ~」と思ってしまうような通報の中、一本の電話がアスガーの刑事本能を目覚めさせる。
助けを求める女性の声。
誘拐されている真っ最中に、子供に電話をするふりをして必死に助けを求めてきた。
「子供と話すフリを続けて」と彼女に命じ、なんとか居場所を特定しようとする。
見ている方は、すでにアスガーと共に耳をすましながら息を飲んでいる。
すぐさま現場に連絡を入れるが、彼等は思うように動いてはくれない。
刑事本能にスイッチが入ったアスガーは、電話だけをたよりに独力で事件を追い始める。まずは、女性の家にいるはずの子供に電話をかけてみることから――。
映像として登場するのは、アスガー以外はまわりにいるオペレーターの同僚のみ。しかし彼等との絡みはほとんどない。
電話越しに聞こえてくるさまざまな場所にいる登場人物たちの声だけで、ハンパ無く緊迫感を煽られる。
アスガーは自身、刑事時代に何か問題を起こしているようで、それに関する大事な出来事が明日ひかえているらしい。事件を追いながら、元相棒や上司と話すことでそれらの事情もいろいろとわかってくる。
特殊な設定ながら、この映画に動きを感じるのはアスガーがさまざまな場所や人に連絡し、彼等を動かしたり協力を要請したりするので、1つの所にとどまっている感が薄くなっていくこと。
この映画を見終わったとき、読書と映画の中間を体験したような感じがした。
誘拐事件という1つの事件が自分の頭の中だけで展開し、映像は自分の想像力のみ。
とは言え、アスガー自身も同じ状態で事件を追っているので、映画を見ている最中は自分が何も見ていないことに違和感がない。
これって凄いなあ…と実感。
しみじみ電話というものの特殊性を感じる。
見えないことのむずかしさ。一方的になる会話。相手の表情や状況を見るということの大切さを思い知らせてくれた。
当然SNSも然り。
面白かった?と聞かれて、とにかく「驚いた」と答えた。