もくれんの映画と読書日記

趣味のかたよった読書と映画鑑賞の日記です。

積読の中から一冊!87分署の刑事さんたちと久々に「電話魔」で再会

ずーと昔、まだ警察小説というものをさほど読んだことがなかった頃、気に入ってしまった87分署シリーズ。

 

「警官嫌い」にすっかり感動し、以後何作か読んだ。で、読もうと思い買ったまま積読されたまま年月が過ぎた本もいくつか。
その中の「電話魔」で、87分署シリーズの刑事さんたちと久々に再会した。

 

 

婦人服店を経営しているラスキンの元に、電話がかかってくる。
「4月30日までに二階から立ち退かないと殺すぞ」
それが何度も続く。

 

相談を受けたマイヤー・マイヤー刑事は聞く。
「その二階に何か重大な意味でもあるんですか」
ラスキンは答える。
「まさか。倉庫に使ってて鰐みたいなでっかいネズミがいるよ」

 

いたずらだろうという予想に反して、その電話はやがてあちこちの店舗にかかってくるようになった。

一方、公園で発見された全裸の男の死体。
この事件を担当するのはわれらが主人公キャレラ刑事。

この二つの事件にかかわっているのがある犯罪グループで、彼らの立場から描かれる場面が合間合間に出てくる。

 

電話魔事件は次第にエスカレートしていき、笑ってしまうような騒ぎも引き起こされ、そして刑事の一人が気づいたある古典的推理小説の名作から、犯人たちの思惑が見え始める。

 

キャレラ刑事は死体の身元を追って地道に捜査を続けていくが、お互い違う事件を担当している刑事たちは、その共通点に気づかない。その辺が妙にリアルだ。この物語は意外とあっけなく解決するが、劇的な幕切れでないあたり、その辺もなんかリアルだ。

 

87分署シリーズは、刑事たちのお仕事場感が強い。設定が刑事ドラマっぽい。互いに冗談をいいあったりからかったり、愚痴ったりする空気感がいい。現代の警察もののような下品なジョークでないのが気持ちいい。当時は下品だったのかもしれないけど。

 

現代の、主人公がほぼ離婚していて、プライベートの面倒な事情が絡みたおし「知らんがな、そんなもん」と思わせる警察小説に多いパターンが出てこない。ねちねちグチグチした本人の心情がほぼ描かれないのだ。

 

やけにカラカラとした雰囲気は、どこか人形感すら感じる。とはいえ、警官嫌い以来さほど読んでなくて、読んでいても忘れているので断言できませんが。

 

ストーリーに関係ないんだけど、気になったこと。この電話魔の物語の中では耳の不自由な人のことを差別的呼び方で貫いているんだけど、手元にあるのがかなり以前に出版されたものだからだろうか。

 

今でも同じなのかと気になって本屋を探してみたが、今のところまだ見つけていません。どうでもいいといえばいいんだけど。