何度か見たことがあって、すごい人たちが出演しているのは覚えてたけど、今回十数年ぶりに見て、双子の老婆の片方が市原悦子さんだと気づいて驚いた。
なんか聞いたことあるぞこの婆さんの声と思ったら、そうだった。やっぱり違うわ、うまいわ。
どうしても金田一シリーズの映画となると、市川監督作品のインパクトが強いので、やはり金田一探偵は石坂さん!と脳が認めたがらないが、今回改めて見ると渥美清の違和感のなさに驚く。逆にあの世界観の中に石坂金田一は合わない。
八つ墓村のストーリーは、ちょっと異質でタツヤという青年を中心に展開していく。
身寄りがないと思っていたタツヤの元に、突然祖父という老人が名乗りをあげる。しかし、弁護士事務所で再開した祖父は彼の目の前で変死するのだ。
代わりに迎えにきた身内の女性とともに、タツヤは岡山の山奥、落ち武者伝説の残る八つ墓村へと向かう。タツヤはその村の有力者である多治見家の跡取りだった。しかしそこからお約束の連続殺人が起こり、彼はほんとに何もしていないのに恐ろしい出来事に巻き込まれていく。
タツヤ役はショーケン(萩原健一)だが、可愛く見えてしまうくらいまわりのインパクトが強い。なんといっても山崎務の狂った演技は圧巻だし、セリフがさほど無いのに迫力すごい。津山三十人殺しをモデルとしたあの事件の場面は怖いったら怖い。
感心したのが、この映画はその場面を宣伝的にも押し出していたし、実際撮り方とか妙にリアルで迫力あるんだけど、落ち武者伝説の場面があんなに恐ろしいとは知らなかった。いや知らなかったわけないから、記憶に残っていなかった。
夏八木勲の落ち武者怖かったし、逆にCG皆無の乱闘シーンは生々しくて魅入ってしまう。そう、この映画生々しいのだ。殺人の手法がほとんど毒殺なので、死んでいく人たちの演技が一流なもので生々しさがすごい。
市川シリーズは、殺され方が残忍だが生々しさは感じない。作りものめいた世界観が逆に面白くハマる。そこに金田一と中村警部たちのコミカルなやりとりが加わって、独特の雰囲気を作り出している。
八つ墓村にはコミカルさは一切無い。笑いどころが全く無い。始終陰鬱とした物語展開をコミカルイメージいっぱいの寅さん金田一が治める。コミカルさ皆無の状態で。無個性でひたすら薄い渥美金田一の存在が、また絶妙なのだ。
いっしょに見ていた娘の感想「渥美金田一、有りやな」
横溝シリーズの中でも名作と名高いこの映画、作られた時代を鑑みても、確かに名作だ。