もくれんの映画と読書日記

趣味のかたよった読書と映画鑑賞の日記です。

子供たちが活躍するミステリーって確かに面白かった「ロンドン・アイの謎」

子供たちが活躍するミステリーってこんなに面白かったなあ、というのを再認識させてくれる本だった。

 

 

12歳の少年テッドがパパ・ママ・姉のカットと暮らす家に、ある日叔母さんと従兄のサリムがやってくる。どこか遊びに行こうということになり、ロンドンの観光名所である大観覧車ロンドンアイに乗りに出かける。

 

大行列でうんざりしているところに、幸運にもチケットをゆずってくれる人が現れ、せっかくだからとサリムが一人で乗ることに。

 

テッドとカットに手を振り、ロンドンアイに乗り込んでいくサリム。しかしサリムがそこから降りてくることはなかった。彼はそのまま姿を消してしまったのだ。

 

日本のジュブナイルの名作少年探偵団シリーズも、プロット自体は複雑ではなかった。謎が明かされれば意外と単純なものだったりしたが、それを解いていく過程と展開が絶妙に面白かった。

 

この物語もかつて味わったそんなワクワク感を彷彿とさせてくれる。謎を解き明かしていくのは少年探偵団のような特別な子供たちではなく、ロンドンに住む一般家庭の姉弟。しかし特別なのは弟のテッドの脳のメカニズムだった。

 

彼はちょっと普通とは変わっている。おそらく人との付き合いがなかなか難しい症候群の子なのだろうなあと予測はできる。その彼の視点ですべてが書かれているのだが、サリムが消えてパニックになっていく家族の様子が、彼独特の思考で描かれていて、これが絶妙に面白い。

 

深刻な出来事でありながら、まるでコメディ映画のような空気感をかもしだしている。また、テッドは気象に興味を持ち、その道では専門的な知識を持っているが、それをまわりの人々や出来事の様子に絡めて表現したりするので笑える。

 

戸惑いながら、恐れながら、それでも極めて理論的な考え方で、テッドはサリム消失の謎を解いていく。

 

ミステリーは行くところまで行ったな、と感じていた昨今の自分の脳に一撃を与えてくれた本だった。プロットだけがミステリーじゃない。解かれていく過程とキャラクターの魅力も大切な要素なのだ。

 

だから少年探偵団は永遠の名作であり、子供たちが生きてきた歴史でもあるのだ。テッドたちもまた、現代の家族の形の1つを歴史として残していくような気がする。


この本の作者が早世してしまったことがつくづく残念でならない。
とりあえず唯一の続編に、迷うことなくチャレンジだ。