オーメンとチェンジリングを合体させたような内容なのかと思っていたけど――。
大人が化物の扮装して子供たちを驚かす祭り。なまはげみたいなものに見えるが、神様の使者であるなまはげと違い、こちらはもっと邪悪なものに思える。
怖さに耐えかねた一人の幼い少年が、「もう帰ろうよ」と父親にせがむ。しかし父親はその化物に扮装している大人たちの一人で、すでに酒のせいでベロンベロン。
酔った勢いで少年を「うるさい」と突き飛ばす。少年は仕方なく一人で家を目指して森の中を駆け抜けるが――。
彼はそのまま姿を消してしまう。
当然世間から攻められ倒す父親。母親も祖父も大人たちも必死になって探すが少年は見つからない。とうとう子殺しの容疑で父親が逮捕されるはめになる。
それから5年後、釈放され酒を断ち反省の塊と化してひっそりと暮らす父親と、旦那の無実を信じて寄り添う母親のもとに、衝撃的な事実がもたらされる。
よく似た少年が地下道で見つかった。
DNAも一致し、彼が行方不明の少年であることに間違いない。
彼はなぜか記憶をすべて失っており、ほとんどしゃべることもしなかった。
戸惑いながらも再会を喜ぶ両親。
しかし、妙に不気味な雰囲気をまとう少年に、一抹の不安を感じる祖父、そして彼にだけ異様に吠える犬…
「そうか、ここからオーメンになるのだな」との期待どおり、彼の言動は不審に満ちてくる。無条件に彼をかばいつつげる父親に反して、ついに母親も疑問を持ち始め、距離をとるようになるが、その様子をじっと見つめる少年の瞳。
この映画は後半から様相を変える。それがポイントなのだが、あっと驚くどんでん返しではなく、じわじわめくられて気が付けばひっくり返っていたような奇妙なストーリー展開だ。
派手ではないが、普通に面白い。
独特の暗さと少年の美しさが逆に不気味さを際立たせていて、結末に素直な気持ちで「やられた」と降参できる。
人は常に、カメラワークと作られたイメージで、いろんなものを見てしまっているのだなというのを納得させられる映画だった。
いろいろ書きたいことはあるが、どれを書いてもネタバレにつながっていくので難しい。なのでここに取り上げようか迷ったのだが、人の弱さとか怖さとか、印象とか、いろんな意味でこれも1つのホラーだなよなあと、ちょっと気に入ったので、あえてとりあげてみた。
単純なストーリーではあるんだけど、グロさや息をつめるホラー映画にどっぷりひたりきっている人には、ちょっとお茶受けになるようなホラー映画です。