おしゃれさと独自な世界観が魅力のホラー映画10選
ホラー映画というのはそれぞれ独特な世界観を持っているものですが、その中でもおしゃれな部分が際立つホラーを集めてみました。
おしゃれなドレスやセットの方が印象に残って、何の怖さだったか忘れてしまうものもありますが、そのおしゃれさとは裏腹に壮絶残忍なものもあったりして。
怖さにプラスαを楽しめるお気に入りのホラー映画10選です。
まずは比較的新しいところで。
サブスタンス
あらすじ
50歳の誕生日を迎えた元人気女優。
容姿の衰えから逃げることはできず、仕事も失う危機に焦った彼女は禁断の美容薬サブスタンスに手を出してしまう。
特別な細胞分裂により、もう一人の若い自分を作ることができる。
ただ守らなければならないのは一週間ごとに本当の自分に戻ること。
しかし、お約束のように決まりは破られていく。
美貌と人気を手に入れた彼女は、本来の自分を見失い暴走していくことに…。
おしゃれな見どころ
なんといっても生まれ変わった若いバージョンのスーちゃんの可愛さと
抜群のスタイルの良さに見惚れる。
そして、セットの造りと色使いはホラーを感じさせない明るさ。
背景や衣装のカラーが原色の明るい色使いなので、全体的におしゃれな雰囲気だ。
テンポも良くとても見やすいのだが、そこはやはりホラー。
ジャンプスケアは無いものの、特殊なグロテスクさで魅せる。
この映画の特徴として目をそむけたくなる場面、たとえばメスで皮膚を切り裂くとか、小汚いおっさんが咀嚼している口元とか、そういう場面をわざとアップで見せてくるのだ。
老いとの闘いという特に女性にとっての身につまされるホラーな課題に、果敢に挑んでいくかつての人気女優デミ・ムーアの体当たり演技に注目。
ラストナイト・イン・ソーホー
あらすじ
デザイナーを夢みて、ロンドンの専門学校へ入学したエロイーズ。
しかし寮生活に馴染めず、一人暮らしを始める。
そして彼女は夢を見始める。1960年代のソーホー。
そこに現れるのは自身と同世代の歌手を目指す少女サンディ。
まさに憧れの時代と憧れのファッションに触発されたエロイーズは、日ごと見るその夢にどっぷりと同化していき、良い意味で実生活にも影響を及ぼし始める。
そんなある日、夢の中で突然サンディが殺されてしまう…
狂気と恐怖がエロイーズの夢を支配していく。
おしゃれな見どころ
おしゃれ映画といえば必ずといっていいほど出てくるこの映画。
60年代のソーホーをたっぷりと堪能できる。
劇場、カフェ、映画館、そこに登場するヒラヒラ、テカテカ、セクシーな衣装に身を包んだサンディの可愛いこと!
ワンシーンごとのライトの色合いや明るさがまさに“夢”の世界で、どっかのテーマパークに迷い込んだよう。
とはいえ、こちらのホラーは殺人事件が主軸になっているストーリーなので後半からは雰囲気が少しずつ変わっていく。どちらかといえばスラッシャータイプのホラーです。
クリムゾンピーク
あらすじ
20世紀初頭のアメリカ。子供の頃母親を亡くしたイーディスは、時折幽霊らしきものを見る。
ちょっと変わり者の彼女を、それでも慈しんで育ててきた父親。
平和な家族の日常に、好青年トーマスがやってくる。
心を奪われるイーディスだったが、ある日突然父親が急死する。
哀しみに打ちひしがれるイーディスは、支えてくれるトーマスと結婚を決意。
そして山頂にあるトーマスの屋敷でトーマスの姉のルシールと共に暮らし始める。
古びて不気味な屋敷で、彼女はさっそく亡霊と出くわし、謎の言葉を聞く。そこから彼女の生活に異変が生じ始める。
おしゃれな見どころ
こちらはホラー感よりもサスペンス的な内容が主軸なのだけど、とりあえず幽霊も出てきてそれが重要なキャラ設定でもあるので。
とにかく作りこまれたお屋敷がすごい。
もちろんCGも組み合わせてのものだろうけど、かなり細部にまでこだわったセットであるようだ。
クリムゾンピークというのは地表を覆う赤粘土の土のことで、ドロドロ感がドロドロしたストーリーと共鳴して気持ち悪いったら。
その気持ち悪さを打ち消してくれるのがイーディスたち女性陣のドレスの数々。
どの場面でもため息が出るような凝ったデザイン。
パールをふんだんに使ったパーティードレスや思いっきり袖が膨らんだパフスリープなどデザインは凝りに凝っているが、どれも色が散りばめられておらず、一色で統一されていたりするのもあって、それがまた上品でおしゃれ。
スマイル2
あらすじ
微笑みながら壮絶に死んでいくという衝撃の恐怖は、前作同様引き継がれます。
とはいえ続編ではないので、これだけ見ても十分面白い。
薬物依存のため活動を休止していた世界的ポップスターのスカイ・ライリーは、療養を終え見事な復活を果たす。
だがある出来事がきっかけで、「スマイルの連鎖」に巻き込まれ、恐ろしい体験をするようになる。
しかし、かつての過去のせいで再び薬物を疑われ、幻覚が出たとして周りはとりあってくれない。
期待と葛藤の中、笑わなけばならないスターとして、次第に狂気の世界へと飲み込まれていく――。
おしゃれな見どころ
なかなかのグロテスクさを誇るこの映画のどこがおしゃれなんだという声も聞けそうだが、ポップスターということでスカイの衣装やファッションは華やかでおしゃれ。
映画そのものは前作の方が良いとの声も多いようだが、個人的には前作には無い独特の華やかな世界観は好きな部類に入る。
ぴちぴちのステージ衣装とオフのゆったりした服装の対比も良い感じ。
おしゃれとは違うけど、主演のナオミ・スコットの叫ぶ喚く泣くの迫真の表情は見ごたえ抜群。
罪人たち
あらすじ
1930年代のアメリカ南部の田舎町。
ミサが行われている教会に、血だらけの少年が凶器を手に飛び込んでくる。
そんな衝撃的な場面から映画は始まる。
冒頭のこの場面へとつながっていくストーリーは、双子のスモークとスタックが故郷に帰ってきたことから展開されていく。
2人はまだまだ解禁されていなかった酒や音楽に溢れたダンスホールを開店する。
集ってくる人々は黒人たちの身内や仲間。
さまざまな思惑や感情が入り混じる人間関係の中で、ダンスホールの夜は盛り上がっていくが――そこに不自然で奇妙なグループが訪ねてくる。物語はそこから一気にホラーの展開を帯びてくるのだ。
おしゃれな見どころ
ホラーでありつつアカデミー賞の最多ノミネートを記録した名作。
なんといっても30年代のアメリカミシシッピーの雰囲気をたっぷり堪能できる。
ダンディな兄弟のスーツがまたおしゃれ。服装だけでなく、ジープで走る道の両脇に広がる花畑の景色や、すさんだ感じたっぷりのダンスホールの内装に流れる歌と音楽…。
たぶん前半までホラーだというのを忘れます。
ホラー的内容はいたってシンプルなものだが、黒人社会に存在する分断や差別などメッセージ性の強い作品になっている。
高慢と偏見とゾンビ
あらすじ
18世紀のイギリス。
ある地方の五人姉妹が見る夢は、裕福な男性との幸せな結婚。
しかし彼女たちの棲む村には謎のウィルスが蔓延し、いたるところに人に混じってゾンビも生息していた。
なので、五人姉妹の日常はのんびりと夢見ていられるだけでは済まず、武器を手にゾンビたちと闘うことも彼女たちの日常だった。
そんな彼女たちの村に、資産家一家が引っ越してくる。女性たちが狙うは息子とその友人。恋愛沙汰とゾンビとの壮絶な戦いが始まる。
おしゃれな見どころ
元になっている「高慢と偏見」は恋愛や結婚事情をテーマにしているので、基本的に恋愛物語といってもいい内容の映画。
上記の作品同様、女性たちのファッションがおしゃれ。
ドレスだけでなく真っ白なストッキングやガーターベルトなど可愛くセクシーなアイテムで明るさと軽さがある。
圧巻のシーンは五人姉妹が颯爽とドレスをまくり上げ、装備していた武器を取り出し戦うアクションシーン。かっこいいことったら!
主役のエリザベスとダーシーの気持ちのすれ違いや恋の行方が中心になっている物語なので、途中からゾンビなんかどうでもよくなります。
ドントウォーリー・ダーリン
あらすじ
ホラーというよりはSFと言った方がいいかもしれないが、ラストに露呈される真実と人の心はとっても怖いと思う。
パーティー、ランチ、プール、習い事…毎日おしゃれで充実した生活を夫ジャックと共におくるアリス。
しかしある日、隣人が赤い服の男たちに連れ去られる場面を目撃してしまう。
それが頭から離れないアリスは、今までの生活に少しの疑問を持ち始める。
やがてそれは大きな疑惑に膨らんで、彼女の身に不可解な出来事が襲う。そして徐々に危険が迫っていく。
おしゃれな見どころ
とにかくアリスたちのファッションを見ているだけで楽しい。そしておしゃれなインテリア、華やかで美味しそうな料理。
50年代のファッションを彷彿とさせるデザインは、どんな年代が見ても楽しめると思う。どちらかというと女性向きの映画かな。内容は男性にも見てほしいけど。
こんな格好でこんな家事してえなぁ~と思うが、自分の体形を考えたらおぞましいな。
でもアリスはぽっちゃり見える時もあるので、それはドレスの影響か?
エスケープ・ルーム
あらすじ
ある日6人に届いた招待状は1万ドルをかけた脱出ゲーム。
疑問に思いながら集合場所に集まった男女だが、ゲームは突然始められる。
「パズルを解きながら、今いる部屋から脱出すること」
招待状の送り主は誰なのか、なぜこんなことをしているのかわからないまま、彼らはゲームに参加せざるを得なくなる。
しかもこのゲームは命をかけた壮絶な脱出ゲーム。
やがて彼らには共通点があることがわかるが…。
おしゃれな見どころ
このおしゃれ度は極めて個人的なものだと思うけど、とにかく部屋そのものがおしゃれなので、ここに挙げることにした。
1つの部屋の脱出に成功するたびに、次々と新しい部屋が登場するのだが、それぞれの部屋のインテリアが見どころ満載なのだ。
天井と床が逆さまになった部屋や、お人形の受付嬢が座る部屋、氷で固められて出せそうもない鍵など…変なアイテムが目白押し。
謎解きのパズルにもなっているその作りこまれた小道具は、1つ1つ見ていても退屈しない。映画を見終わってももう一回じっくりと一部屋一部屋見てまわりたい気分になった。
ベニー・ラブズ・ユー
あらすじ
おもちゃが恐ろしいことをしでかす人形殺人鬼タイプのコメディホラー。
おもちゃのデザイナーであるジャックは、冴えないデザインでなかなか会社に認めてもらえない。
そんな中、35歳の誕生日に仲良く暮らしていた両親が急死する。お金に困ったジャックは家を売ることを余儀なくされ、思い出のつまった部屋の中を整理する。
そこには子供の頃からのお気に入りだったウサギのぬいぐるみベニーもいたが、意を決して捨てることにするが――。後はお約束の人形殺人鬼の登場へと展開していく。
おしゃれな見どころ
この作品をおしゃれというのも憚られるほどのスラッシャーグロテスクホラーなのだが、ベニーがチャックなどと違って可愛いので載せてみました。
見た目全然可愛くないのだが、行動やコミカルなやりとりのセンスが抜群で、
クッキーモンスターみたいな声で「ベニーラブズユー」としゃべる。
顔もそっくりなので、絶対寄せてると思うが。
ぶち殺した死体を自慢げに見せて「じゃじゃーん」と声を発するタイミングが最高。
コメディなので基本笑える部分は多いが、なかなかの残酷度なので、子供にはキツイかも。
子供部屋の柔らかいインテリアの雰囲気がわざとホラーっぽさが無くて逆におしゃれ。
映画全体的の明るいカラー使いもわざとらしくていい。
怪談
あらすじ
日本のホラーでおしゃれというのが思いつかなかったのだけど、まあ朝ドラの八雲さんに敬意を表して、最後は日本の名作怪談で締めるということにいたしましょう。
小泉八雲の名作「怪談」の中から有名どころの4話で構成されているオムニバス形式。
もはや怪談というより昔話といった方がいいくらい日本人に馴染みまくっている「雪女」
妻を捨てた男の身勝手さを描いた「黒髪」
茶碗の中に映った見知らぬ男。それを飲み干した男に起こった怪異「茶碗の中」
そしてこれぞ八雲文学の真骨頂「耳なし芳一」
おしゃれな見どころ
1964年制作ということで、スタジオ撮影でCG部分など微塵もないが、当時の大がかりなセット撮影の独特の世界観が見ごたえ十分だ。
初めて見たとき、モノクロを後付けでカラーにしたのだと思っていたが、このままのカラー作品だったと知って驚いた。
そのエピソードごとにカラーの雰囲気も違い、手の込んだ演出は日本ホラーの幽玄な世界観を表現していて美しい。
正直、怖い話ではないし、1つ1つの話がけっこう長く寝そうになったのも事実だけど、静かな日本独自の世界を楽しんでみてほしい映画だ。
とにかく早送りには向いていないので、くれぐれも禁止!
まとめ
多分に偏見の多い選択だったが、どちらかというと現代ものより歴史的なものが多くなった。それぞれの時代の特徴をおしゃれという表現方法で表されたものは個性的で印象に残る。
ただどれもホラーなので、基本は怖さが主役。
ホラーとしても秀逸だ。
「ハウス・バウンド」はホラーからサスペンス、コメディにまで変化する不思議な映画
不思議な雰囲気を持つお屋敷タイプホラー。
あばずれ少女カイリーは、ATM強盗を起こし逮捕され、保護観察処分を受けることになる。母親が再婚相手と暮らす実家の屋敷に期間限定で閉じ込められることに。
足に装置をつけられ、家を出ると通報によりすぐに係の警察官がやってくるという厳重な仕組み。
かなり個性的な母親と義理父との暮らしにうんざりと怒りと絶望を混ぜ合わせた顔つきで日々を送りはじめるカイリーだったが、ある日家の中で奇妙な出来事が起こり始める。
勝手に開くドア、動くぬいぐるみ、奇妙な音…お屋敷ホラーには定番と言ってもいい怪奇現象の掴みが続く。
母は「この家にはそういうことが起こるのよ」と実は認識している様子。そんな母の態度とわけのわからない現象に怖さを通り越してイライラを募らせたカイリー。
とうとうせっかく出てきた怪奇現象の動くぬいぐるみにその怒りをぶつけぶんなぐって燃やしてしまった。
この辺から、「あ、この映画はちょっと違うかな」と興味を持ち始めた。
わざとだと思うのだけど、前半は暗さとキャラクターたちの不気味さを強調しているように感じる。
カイリーもホラー映画のヒロインとは思えないほど可愛気が全くない。いつも口を半開きにして汚い物でも見るような表情で顔の筋肉をゆがめている。
しかし、中盤辺りからこの屋敷の由来や隠された事実がいろいろとわかってくると、映画の持つ雰囲気がガラっと変る。
ホラー映画の暗さからサスペンス映画の雰囲気にスイッチが切りかわり、カイリーの表情が俄然引き締まってくる。
その展開により、不気味だったそれぞれのキャラが個性的なコメディキャラに。
気が付くと、サスペンスコメディホラーになっているのだ。
正直何回か笑った。
ラスト近くにカイリーが切ない絵を見る場面では、泣き出すカイリーの気持ちを推測して爆笑した。
「ミーガン」の監督の初期の長編作品ということで、怖さ、グロさ、スリリング、笑いといつぱい楽しめる造り。
まあその分、見方によってはすべてにおいて存分ではないともいえるけど。
でも個人的にはこの感じ、面白かったです。
そしてすべてが終わった後のカイリーの表情も、ホラー映画のラストヒロインのままに、とても可愛いものになっていた…のか、可愛く見えたのか…。
日がたてばもう一回見たくなるホラー映画だった。
「9人はなぜ殺される」で実感するリアルな恐怖
読んだ後に気が付いたのだけど、そういえばこのミステリー、誰が主役かわからない。
性別も年齢も職業もバラバラの9人の名前が記されたリスト。
それがそれぞれの人物たちの元に送られてくる。
誰もが自分以外に知っている名前は無い。
気持ち悪く思いながらもどうしようもできず、捨てる者、とりあえずそのまま置いておく者。
そんな中、そのリストの中に記されていた人物と同名の老人が殺された。手にリストの紙を握りしめて。
リストの中の一人でもあったFBI捜査官のジェシカは、すぐさまリストの人物を特定するべく動き出す。しかしそれはかなり難しい作業だった。アメリカ全土を対象にしなければならないのだから。
そしてまた、リストの中の二人目が殺される。
偶然ではないと確信しながら、必死にリストの中に知った人物はいないかと改めて記憶を探るジェシカ。
かろうじて記憶にひっかかったのは、かつて父から聞いた古い友人の名字。幸運なことにその人物と連絡がとれ、そこから何か引き出せないかと調べ始めるのだが、ジェシカ自身も狙われている可能性があるため保護対象になり、捜査ができない状況に…。
読者の予想と期待通り、9人の人物は次々と消されていく。正直ただそれだけの展開が延々と続くのだが、予想以上にスピーディーでバンバン読み進めてしまう。
この物語は、ジェシカ視点ではなく、9人の人物のそれぞれの視点で描かれる。寂れたホテルを経営する老人、実業家の愛人として過ごす女性、俳優やミュージシャンを夢みる若者、妻と子供たちに翻弄される平凡な会社員…など。
いかにも人物紹介じみた描き方ではなく、彼らの日常の一場面を切り取ったような描き方なので、その人物に感情移入しやすい。
それぞれの日常で起こった小さな出来事、「お、不倫が始まるのか?」「え、この人実は変態?」みたいな感想を抱きかけたところで、いきなり殺される。
ほんと簡単な文章一行で殺されてしまうのだ。
読んでるこっちがあっけにとられるくらい。
この小説のすごいところはまさにそれではないかと。
そう思いながら読んだが、解説でも同じことが書かれていた。
不倫はどうなるんだろ、始まりそうな恋愛は、起こりそうなトラブルは…これから展開していくだろう彼らの人生が一瞬にして消されてしまうのだ。
まったく予想できずに、突然ぶった切られる人生というものをこの一行によって読者は実感できる。
題名からすると、動機に重点が置かれているように見えるが、ネタばれギリギリでいうと、その注目すべき動機の種を彼らは持っていない。動機は犯人の頭の中でのみ組み立てられたものなのだ。
自然と昨今のひどい事件や事故を連想してしまう。
先日スーパーでばあちゃんたち同志がエレベーターの前で、「怖いなあ~」「ほんまもうむちゃくちゃやなあ!」と悲惨な事件に怒って呆れて嘆いていた。
ほんまそのとおりや、むちゃくちゃや と深くうなずきながら横切った。
この物語はありえない設定のサスペンスなのに、そんなむちゃくちゃな論理で人生を一行で終わらされるかもしれない恐怖が変にリアルなのだ。
ある意味この題名は強烈な皮肉のようにも思える。
ストーリー自体は本格推理ではなくサスペンス調なのだが、物語そのものはアガサ・クリスティ―の名作のオマージュともいえる内容。
あの名作も誰が主役かわからない展開だったが、こちらも存分にあの特殊な世界観を楽しめた。まさにアメリカ全土を孤島にしたクローズドサークル。
ただ登場人物が多い(*´Д`)
とりあえず冒頭に9人の名前と職業は書いてあったので助かったけど、ほんと何回確認したことか(-_-;)
「インビジブル」は懐かしさをともなっていろいろと思うことも多し
ベタベタすぎる関西弁、ケンカか?というようなやりとり、同調しながらスルリと相手の懐に入り込む馴れ馴れしさ…
出てくる地名がいちいち知ってる場所過ぎることも加わって、昭和29年の大阪の刑事さんたちにすっかりやられた。
戦後、昭和生まれがまだ戦争知らずの若造だったころの大阪。その若造刑事の新城は戦後処理ともいえるような仕事に、やりがいの無さを感じて鬱々とした日々を送っていた。
そんな中、猟奇的ともいえる殺人事件が発生する。政治家の秘書が頭に麻袋をかぶせられた刺殺体として発見されたのだ。
ようやくやりがいのある仕事にぶつかり意気込む新城だったが、なぜか国警から派遣されたエリート官僚と組まされることに。
東京からやってきたエリート守屋は、正論を振りかざしたストレートな物言いで相手を怒らせ、聞き込みの場もぶち壊しにする。
中卒でたたき上げの新城は振り回され、当然のことながら2人はぶつかる。ぶつかりながら同調しながら、それでも真相に近づいていく過程は面白く、まさにバディもののお手本のような設定。
最終的に目指すは政治家の大物であり、まさに戦後こんな政治家は山ほどいたであろうおぞましい事実を実感させてくれる。
戦争さえなければこんなことには…というテーマが根底にあった横溝作品も思い出させてくれた。
戦中の地獄、戦後の地獄と、それを経験した人物たちの悲劇的な人生を描き出したストーリーと警察官たちを中心に据えた捜査の臨場感は、まさに松本清張の世界!
作者は松本清張賞を受賞されたそうで納得(しかもこの若さ!)
ある意味ベタともいえるストーリーを高評価にしているのは、なんといってもキャラクターとテンポ、そしてすべてを包括する大阪という特殊な場所。
これもベタな感想になりますが、今や関西万博やユニバーサルとおしゃれで先進的な場所になっている大阪の、その根底にある汚さやパワーを感じられて楽しかった。
まさに死体が見つかった安治川がまだまだどぶ川であった頃を知っている自分にとっては、懐かしくもあり、今はもう無い光景をいろいろと思い出したりもできた。
ちなみに安治川口というのが、ユニバーサルシティ駅の1つ手前の駅です。雑草に埋もれるようにずーと続いていた線路が、大阪とは思えないほどのどかで、子供心になんか好きな光景でした。
もはやこの作品は歴史小説といってもいいかも。
「失われた貌」は事件にまでいかない日常茶飯事が溢れる
2025年度の面白いミステリーとして圧倒的な強さで他をぶっちぎった話題作「失われた貌」を読んだ。
どうしても期待値を上げて挑んでしまうので、そこは控えめに極めて冷静に向き合った。
作者の他シリーズは読んでいて、主人公「エリ沢泉」のゆるやかな探偵ぶりとしっかりとした本格ぶりがお気に入りなので、まあ間違いないだろうと思っていた。
こちらはふらりと事件に関わっていくエリ沢青年と違い、がっつり事件に挑む刑事さん。看護師の奥さんと娘さんを持つ普通の若きお父さん日野刑事の視点で事件は描かれていく。
山奥で発見された死体は、顔がつぶされ手首も切り落とされているという猟奇的なものだった。まずは身元の確認から始まった捜査だが、なかなかスムーズにいかない。
そんな中、一人の少年が警察署を訪ねてくる。身元不明の死体は「十年前に失踪したお父さんではないか」と彼は言うのだ。
どう見ても十年前は生まれているかいないかの年齢。いったいどういう事情なのか、といぶかる日野に、生活安全課で同期の羽幌が少年の素性と関わりを説明してくれる。
この羽幌刑事も、少年と共に事件におおいに関わってくるのだが、この物語の特徴として、主軸の殺人事件だけではなく様々な出来事が平行して噴出してくる。
たとえば第一発見者である人物の不法投棄騒動を始め、ゴミ屋敷問題、家庭内暴力、不信者の声かけ、小規模な横領、不倫などなど。
どれも起訴や訴えがないため、埋もれている日常茶飯事ともいえる出来事だが、どれもうんざりするほど現実的だ。
しかし面白いことにまったく違う出来事に見え余談とも思えるような事ですら、それらが少しずつ絡み合い、またはすれ違い、事件の真相へと向かっていく。
また登場人物たちの個性や人物像がそれらの出来事と関わることで印象付けられていく仕組み。
この本の紹介としてよく言われているのが、みごとな伏線とその回収だが、確かにささいな発言や無駄話さえ無駄にされてないことに感心する。
かなり作りこまれた作品だなあというのがわかる。あるはずのない偶然の関わりや積み重ねでありながら、1つ1つの出来事がリアルな日常の事件なので違和感なく読めるのだろう。
事件の意外性もさることながら、この物語のポイントになるのはやはりその作り込みの部分だと思う。こういう楽しませてくれ方久しぶりに出会ったなあと。
現実的な推理小説は行きつくとこまでいった感があって、実際仮想世界のミステリーが多い気がする。それはそれで面白いし楽しませてもらえるけど、やっぱりこういうのも時にはほしい。
正直、ものすごい感動や「やられたあ~!」てのは無いけど、これがダントツぶっちぎりになるっていうのもわかる気がする。みんな実は枯つれているのよ。
エリ沢線シリーズともに、櫻田氏はこれからも本格ファンにとって貴重な存在だ。
「M3GAN ミーガン 2.0」は可愛いターミネーター
劇場公開していないということで、配信サービスはありがたい。
やはりホラー系映画はよっぽど有名にならない限り、コアなファンが多いので集客見込めないってとこの劇場公開中止なのでしょうな。
とはいえ、ホラーの括りに入れたい前作に比べ、これはまったくのSF。
正直ミーガンはチャックやアナベルではなく、完全にターミネーター。
ホラー系ミーガンを期待していたファンにとっては、期待外れだったのかも。
本場アメリカでの興行成績が振るわなかったというのも、その辺関係してるんじゃないかな。
ストーリーはしっかり前作の続きで、ミーガンの持ち主であり相棒だったケイディも14歳になり、ミーガンの開発者である伯母ジェマと暮らしている。
ジェマは、ミーガンの事件により、進化し暴走していくAI技術の歯止めの必要性を訴える研究や活動をしていた。
しかしそんな彼女の思いとは裏腹に、世の中にはすでに新しい暴走アンドロイドが誕生していた。
ミーガンよりお姉さんタイプでセクシー系ロボット「アメリア」
彼女もまた暴走し、殺人兵器と化して暴れ始める。
序盤はアメリアの不気味さや暴れっぶりを堪能し、中盤でアメリアの暴走の裏が暴かれると共に復活を遂げたミーガンが登場する。
前作で体を失ったミーガンなので、始めコンピューターの中に存在するものとして体が無い。
そこでとりあえず体を作るようにジェマにお願いというか脅しをかけるんだけど、雑で簡単に作られた丸いちびっ子ミーガンが可愛いったら。すでにホラーではありません。
終盤は世界の破滅を守るべく戦うことになるミーガンプラスケイディやジェマたちのスピーディアクション。もうまったくホラーではありません。
まさにターミネーター。
シュワちゃんはひたすらカッコ良いけど、ミーガンは可愛カッコいいんで、そこが魅力的。前作に続きしっかりキレッキレに踊ってくれます。
ストーリーも別にめずらしいものではないので、とにかくミーガンのキャラで盛り上げている映画。
どんな技術を開発しても、結果的に使われるのは軍事目的というメッセージは、身に染みて実感しているけど、じゃあ私たちはどうすればいいんだ、ってことになるんよね、結局。
映画の中でも未来に期待する、未来の彼らはきっとうまく使いこなしてくれるみたいなことを言ってたけど、まあ確かに振り回されている現代人よりは、付き合い方というものを見出していくでしょう。
それまでは、しっかりとわかりきったメッセージとはいえ、大事なことを発信していくことが今の自分たちの役目かもしれないと静かに思ったりして。
個人的にはAIが人を滅ぼすのはきっと簡単なんだと思う。
別にAIが手をくだして殺戮しまくらなくても、AIにすべてやってもらって、怠け者になって退化してバカになってほっといても勝手に滅んでいくんじゃないかね。
個人的には続編を期待するけど、興行ふるわなかったっていうし、どうかな。
「イマジナリー」は予想に反して人形殺人鬼の話じゃない
クマのぬいぐるみが重要アイテムになるらしいので、チャックやアナベル系の人形殺人鬼パターンかと予想していた――が、ちょっと違った。
いい意味で。
絵本作家のジェシカは、旦那と娘2人の四人暮らし。
旦那は再婚で、娘も前妻との子ということで、年ごろの娘たちとうまく付き合っていこうとがんばるジェシカ。
しかしなぜか悪夢に悩まされる日々が続き、旦那の勧めもあって気分一新引っ越しを決意する。
引っ越し先は、幼い頃自分が住んでいた家。
ジェシカも母を子供の頃に亡くしていて、父は精神を病んで介護施設にいる。
実は娘たちの本当の母親も精神を病んで施設にいるという何やらややこしい家族の過去と状況。(ぼんやり見ていて最初わかりづらかったが、まあ次第にわかってくる)
そしてその家の地下室で、まだ幼い少女の次女アリスが問題のくまのぬいぐるみと出会ってしまう。
ぬいぐるみ相手に一人遊びを開始するアリスだが、まわりは子供によくある空想の友達として微笑ましく見守る。まあまあその辺よくある展開で。
で、次第におかしいと思い始めるのだが…。
読める展開はここらあたりまでで、ストーリーは意外な方向へ舵を切る。
中盤、危険な言動を始めたアリスに児童カウンセラーらしき女性が呼ばれるのだが、その辺りからくまのぬいぐるみの正体と、ジェシカ自身の過去の物語が展開していく。
前半に見せられたわかりにくい過去や、いわくありげな父の存在、奇妙な近所のばーさん、傷痕や絵などのアイテムを回収しつつストーリーは進んでいく。
まさにアメリカの基本的なエンターテインメントホラーだなあという感じ。
メッセージ性の強い重い映画や本の合間にはぴったりだ。
グロテスクを期待する映画ではない。イマジナリーという題名どおりどちらかというとファンタジーに近くなっていく。
とはいえ、親と子供との関係、孤独や成長の物語でもあるので、やわらかいメッセージはしっかり存在する。
自分も幼い頃、親との関係が悪かったせいか、空想の友達を持っていた時期がある。
アリスとは違い、眼に見えない相手と心の中で会話していたが、ある時となりにその存在をしっかりと感じた瞬間があって、その時は小さかったこともありとても嬉しかった記憶が残っているが、実はとても怖いことだったのかも。
でもなんといっても時期が時期だけに、くまのぬいぐるみが等身大になって牙むいて襲い掛かってくる場面が一番怖かったね。今の日本にはシャレにならん。

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