もくれんの映画と読書日記

趣味のかたよった読書と映画鑑賞の日記です。

「甲賀忍法帖」の荒唐無稽で壮絶な忍者の魅力に酔う!

「忍者!」「伝奇!」といえば“山田風太郎”といえるほど、現代の忍者像に影響を与えたその世界のパイオニア的存在。

しかし私自身は、山田氏のもう一つの世界である歴史もの、時代ものが好きなので、どっちかっていうとそちらの方に傾倒していて、忍者ものはさほど多く読んでいなかった。

魔界転生」と「明治十手架」くらいなかあ。(もうこの2つは超ド級の面白さ!)

 

で、今回数ある忍法帖シリーズの始まりにして傑作の「甲賀忍法帖」を読んだ。
旅先で入ったいい感じの古本屋さんで見つけたもの。

ここんとこ面白くない本ばかりに当たっていたので、間違いのないものを読んで気分を盛り立てようと家の中の未読の積み上げ本から選んだのだけど、大正解。
盛り上がるったらないわ。しんどい現実から大逃避させてくれる夢の世界。伝奇ものは正直ほとんど読まないのだけど、風太郎忍法は別。

 

甲賀忍法帖 山田風太郎忍法帖(1) (講談社文庫)

甲賀忍法帖 山田風太郎忍法帖(1) (講談社文庫)

 

 

ストーリーとしては単純。長年の宿敵である甲賀一族と伊賀一族が死闘を繰り広げる物語。敵対していた甲賀と伊賀。しかし突如出現してしまったロミオとジュリエットのような恋人たちのおかげで、不承不承仲直りしなければならない状態になっていた両一族だったが。


突然降って湧いた徳川家康の荒唐無稽な愚案。
世継ぎを選ぶくじ引き代わりに、甲賀と伊賀を戦わせるというわけのわからないもの。

しかし、悲劇的なのはロミオとジュリエットの二人だけで、元々仲直りなんぞしたくもないまわりの者たちは、嬉々としてこの命をかけたくじ引き合戦に挑んでいく。

 

正直、この物語はとても不思議な造りになっていて、主人公は誰?となると、浮かばないのですね。当然恋人同士の二人であるんだろうけど、ものすごく影が薄い。二人の持っている術が派手に戦わないものなのでしょうがないともいえるのだけど、まわりの忍者たちが壮絶で人間離れの過激さなので、薄くなること否めない。

 

蝶を操るもの、顔を変えられるもの、体を変形させてどこからでも逃げ出せるもの、体中吸盤のようになっているもの、
なんてまだまだ序の口で、

ナメクジみたいに体を溶かすことができるもの、情事に誘って興奮した吐息により毒殺するもの、究極が、切られても刺されても体を再生させることができる不死の忍者。

あり得なさ過ぎて面白すぎる。


全員無敵、絶対死なないなんてどうやって戦うんよ?!
と思うのだが、このストーリーの巧みなところは、彼らが実に合理的な方法で相手をやっつけ、そしてやられていくこと。
それぞれの特異な術が、思いつきのいい加減なものではなく、納得のいく方法で巧みに弱みに付け込まれることに感心させられる。

 

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2005年公開の映画「SINOBI」が「甲賀忍法帖」の原作を元にしているとは知らなんだ。正直見てないので、何とも言えませんが、これ読んでからだとちょっと見てみたい。
評価は賛否両論なのだけど、山田風太郎氏の原作はしょうがないのですね。
インパクト強すぎて、頭の中で壮大な世界を描きすぎてしまうから、どうしても納得させられる映画は難しいと思う。

 

でも読んだら絶対「映像化してほしい!見たい!」と思わせるのが、スピードとリアルに満ちた山田ワールドの魅力。

だからね、レビューにも書いてあったけど、別のものだと思えばいいんです。
原作はいったん頭から外し、映画として楽しむと面白いはず。
魔界転生」もそうでした。当然原作の迫力には到底かなわない。
でも、面白かった。あれの場合、役者さんたちの為せる技でもあるけど。

 

しばらくはまりそうだな。忍法シリーズ。
世界中にその魅力を伝えた山田風太郎ワールドの忍者たち。
しばし、コロナと戦う我らにも力を!