もくれんの映画と読書日記

趣味のかたよった読書と映画鑑賞の日記です。

「ダダ」ってこんな可哀想な話だっけ

初代ウルトラマンの宇宙人「ダダ」といえば、見た目が怖い、不気味というので有名なキャラクターだが、先日改めて鑑賞するとけっこう可哀そうな話だった。

 

 

地球人の標本を持ち帰るという仕事で、単身地球にやってきたダダ。
彼はさっそく条件に合う地球人を集め始めるが、そのやり方がいささか荒っぽかった。

 

たちまち世間の注目を浴び、あろうことかウルトラ警備隊のキャップを巻き込んでしまい、当然ウルトラマンが出てくることになる。

 

ウルトラマンの強さを実感したダダは、自分の星に通信をおくり、「無理です」と報告するが、上司にはねつけられる。

 

仕方なく地球に残り、結局ウルトラマンと闘う羽目になるダダ。しかしかなうわけもなく、戦いの途中で逃避行を試みるが、スペシウム光線で黒焦げにされて墜落死する。

 

「ダダってこんな可哀想な話だったっけ…」っと、いい年の親子三人で鍋つつきながら見ていたのだが、「パワハラだ」「理不尽すぎる」「あんまりだ」と、変に盛り上がってしまった。

 

特にリアルに自身や友人たちのパワハラを実感している社会人の娘は、哀れなダダの身を思い「訴えるべきだ」と息巻いた。

 

「きっと残された奥さんや幼い子供がいるに違いない」
「ついに同僚ダダたちの堪忍袋の緒が切れてしまうねん」
「あの上司と会社相手に戦うことを決意するわけや」


「証拠や証言を集めるんやけど、邪魔される」
「そこで、重要証人として登場するのが意外にもウルトラマンやったりして」
ウルトラマンも気にしててんな」

と、続ダダの創作ストーリーに盛り上がり、ついに勝訴にこぎつけた家族や同僚たちが爆死したダダの空っぽの墓の前で泣いて報告するというところまでで完結した。

 

ふざけた話だけど、まあ、この年だからこそ盛り上がれる話や状況なのかも。

 

昔のウルトラシリーズの話って、ものすごく奥が深いものに出くわすことがあるので面白い。60年以上前のものとはとても思えないクオリティとストーリー性の深さは有名だけど、逆に今でもリアルに腹をたてられることが情けないやら悲しいやら。
たいして何にも変わってないってことやないか。

 

基本子供の見るものであった番組なので、意味も何もわからなかっただろう。自分も再放送で何度か見たが、ダダの顔が怖い以外に何の記憶も残っていない。

 

パワハラなんて言葉もなかった時代、大人たちはどんな思いでこの話を見たのだろうか。高度成長を駆け上っていく時代、こんなことは当たり前のこととして、もしかして地球に来ていたダダは、ただ単に「情けないヤツ」として見捨てられていたりして。