もくれんの映画と読書日記

趣味のかたよった読書と映画鑑賞の日記です。

まるで映画「頬に哀しみを刻め」の壮絶バイオレスに酔った

2023年のミステリーで話題だった海外ミステリー。
謎解き系ではなく、こんな感じのゴリゴリのバイオレンスは普段あまり読まないので、読み切れるかなあという不安はすぐにどっかへ行ってしまった。

 

 

主人公、黒人のアイクと白人のバディ・リーはかつてムショ経験のある初老のおっさん。2人には親とは正反対の真面目で優しく優秀な息子たちがいるが、彼らはカップル。

 

息子たちの考え方や生き方を拒絶し、対立して傷つけあってきたお互いの親子。
そんな中、息子たちが惨殺される。

 

彼らが殺されることによって初めて顔を合わせるアイクとバディ・リー。警察の捜査が一向に進まない中、苦しみを乗り越えようとする2人だったが、ある日息子たちの墓が何者かによって破壊されてしまう。

 

それがきっかけとなり、眠れる親父たちに火をつけることになる。
息子たちはなぜ殺されなければならなかったのか、
謎を追いかけていく彼らは壮絶な戦いに巻き込まれていく。

 

とにかく映画を見ているよう。
主人公の2人の傑出した個性はもちろんのこと、まわりのキャラクターたちの存在感もすごい。

1人目を勢いで殺してしまってから、怒涛のように始まるバイオレンス。殴る蹴る、銃炸裂しまくり、くだらないジョークに汚い言葉吐きまくり。まさにアクション映画の王道。映像が浮かぶこと!浮かぶこと!

次から次へとダレる瞬間もなく、ストーリー展開も早いので実に読みやすい。息子たちが殺された謎や犯人捜しももちろん楽しめるが、そこには予想以上に重いテーマが待受ける。

 

解説にもあったように、人種差別やLGBT問題をここまでストレートに前面に押し出すストーリーはめずらしいし、それだけにドーンとぶつけられるインパクトもすごい。

 

世間の話題として把握していても、自分自身のこととして、また家族という立場でどう対応し受け容れることができるかどうか、ハードボイルドでありながら問いかけてくるテーマは実に繊細だ。

 

「あの時もっと話し合っていれば」「あの時もっと向き合っていれば」
親であれば一度は抱えるジレンマと後悔の念と、親として大人としての生き方をさまざまな人物や親子を通して見せつけられる。

 

とにかく2人の初老バディはカッコよく、「これ絶対映画化されるぞ…」と確信に満ちながら楽しく読ませてもらえた。

 

始終自分の頭の中で暴れまわっていた俳優さんとしては、
ムショから出た後、苦労を重ねて地道に園芸会社を経営しつつも、燃えるエネルギーを爆発させて壮絶キレてタフなアイクに、デンゼル・ワシントン

 

アル中で賃貸料も払えない、頼りないけどそのストレートな正直さと言動が憎めないバディ・リーにイーサン・ホーク

 

ちょっと年とりすぎてるかな。
多分にマグニフィセント・セブンのイメージ入りすぎてますが。