最近読んだ本が立て続けに自分にとってハズレばっかりだったので、本屋さんで見かけた間違いない作者の本を手にとった。
近藤史恵さんの作品は、やはりビストロシリーズが一番好きで、いつもお腹が空いて楽しくなる。今回はホテルが舞台ということで、おしゃれなホテルライフを本の中で満喫できるのかと思ったら、意外とホテルはこじんまりとしたとこだった。
でもハワイに行きたくなった。というか、旅に出たくなった。
教師を辞めて神経病んでいた主人公が、バックパッカーらしき友人にハワイ島のあるホテルでの滞在をすすめられる。同時到着した一人旅女子、昼間こもって夜活動する奇妙な男、感じのいい女主人と壮絶不愛想な旦那など、滞在客は個性的な面々が集う。
すぐにでも殺人が起きそうな設定なのだが、主人公の地味なホテルライフと、人物観察が続く。退屈なわけではなく、そこはビストロシリーズでお腹が空いてしまうように、旅心をくすぐる描写で楽しい。
しかし、ところどころ挟まれるそれぞれの意味深な言動で、ただでは済まない感をじわじわにじませてくれる。やがて、満を持しての死体発見。
誰もが怪しい側面を持っているので、犯人捜しとしてはまったく予想がつかず、どうなるどうなるとするする読める。
ラストはキョーガクとまではいかなかったが、積み残しのない伏線回収で納得のいく読み心地だった。
ただ個人的に、主人公の性格がどうにも合わなくて、いちいちイラつく。なんかうっとーしいヤツだなあと思っていたら、教師を辞めた理由もすごかった。そんな心情つらつら書かれてもよ!
行ったことないからわからないですが、爽やかなハワイのイメージの中で、爽やかさが微塵もない人物たちのストーリーは、自由に生きられる時代ゆえに壁にぶつかることも多く、鬱屈していく私たちを表している感がある。
ホテルピーベリーでそれぞれがお一人さまで過ごす彼らは、特殊な人でありながらどこにでもいる人物たちでもあって、ゆえに彼らの中に自分の内面がチラチラと見えることもあり、よけいにイラついて主人公に八つ当たりしたくなる気の毒なひとときでした。