もくれんの映画と読書日記

趣味のかたよった読書と映画鑑賞の日記です。

SF青春コメディホラーなんでもありの「ザ・スイッチ」

「ハッピー・デス・デイ」の監督がまた楽しませてくれるということで、ワクワクして挑んだ。

 

 

同じ時間を繰り返すタイムループが「ハッピー・デス・デイ」
今回は “入れ替わり”
かわいい女子高生と残忍無比な殺人鬼が入れ替わってしまうというストーリー。


どちらもSFとしてメジャーなテーマだが、目新しいものではないだけにヘタすると単なる二番煎じな印象になってしまう。感動ものになりがちなこのテーマをホラーと笑いに持っていったのが成功かも。

 

プラス、なんといっても絶妙なキャラの描き方。
テーマやストーリーはただの器と化してしまうくらい、それぞれの個性が炸裂する。

 

主人公は当然のこと、友達たちの特異性が抜群。
「ハッピー・デス・デイ」の友人たちはどいつもこいつも笑わせてくれたが、今回は登場人物がそこまで多くないものの、キャラクターの魅力は健在。


「ザ・スイッチ」の主人公は殺人鬼になってしまっているため、女子高生の器である殺人鬼のデカいおっさんと絡み、活躍するのが親友である男女。

 

彼等自ら「黒人とゲイの組み合わせはめずらしい」と言ってしまうこの二人の奔走ぶりが、この映画を持っていく。

 

主人公のミリーちゃんは、くりくりしたかわいい目を存分に活かし、殺人鬼に変貌してからの目力が迫力。ミリーちゃんに惹かれていく青年が、車の中でおっさんといい雰囲気になっていく場面なんかは、単純だけど笑える。

 

この手の映画に小難しい評価はナンセンス。
とにかく一度でも笑えたら、自分の中では評価大!

 

ゴージャス「エリザベス」

ケイト・ブランシェットのことあんまり好きじゃない。
何か受け付けないものがあるので、映画もほぼ見たことないが。

 

この映画はすごかった。

 

 

欧米の歴史ものは、衣装やセットを見ているだけでも楽しいので、内容がいまいちでもダラダラ流していられる。

 

でもダラダラしていられませんでしたね。
エリザベスという人物が魅力的すぎて。

 

まだ少女といえるような頃から、貫禄のラストまで、女王エリザベスの存在に惹きこまれた。かもしだす雰囲気とかオーラが徐々に変わっていく感じがビンビン伝わってくる。

 

女王になってからも、最初のオドオドした感じは可愛くて「頑張れ」と声をかけたくなる。数々の裏切りや政治の駆け引きによって、日々凄みを帯びてくる目つきや表情。

 

まあ境遇があまりにも違うけど、年くうってこういうことなのだなと思ったりもする。
「女性は強い」なんて簡単な感想がすぐに出てきそうだが、女性の強さは心にある。
どうしても感情が先にたって、まわりが見えなくなってしまうのは女性の弱点。


でも、引きずらない心、切り替えが早い心はめげない心につながる。
心をコントロールできれば、またそれを利用するこもできれば、鉄の女になれる。
だから旦那が先だっても長生きできる。

 

ただ、それには賢さも必要。
まわりを見る。状況を見る。先を見る。
そうすれば最強の鉄の女になれる。
現代の鉄の女たちの元祖ともいうべき人物像を、名女優の力でみごとに魅せてくれた。

 

 

自分にとってケイト・ブランシェットはアクの強い植物で、毒草にもなり薬草にもなる。
毒の部分にあたるとしんどいが、薬の部分にあたると壮絶に効く。
このエリザベス薬として強烈に効いた。

 

また衣装が素敵なんだなあ。
マリーアントワネットはピンクとリボンとひらひらフリルって感じだった。
まあ時代が違うけど、エリザベスの場合シンプルでゴージャス。

変なデザインもあったけど、色合いが個人的には好きだな。
パールやアクセサリーも際立った。


それに比べて、男性のあの提灯ブルマーみたいなのはどうしてもダメだわ。
どんなかっこいいセリフも表情もちょうちんブルマーで炸裂するわ。

驚きの設定「ギルティ」で想像力を試された

世界中を驚かせ、賞も多数受賞した話題のデンマーク映画

舞台になるのは緊急通報室のみ。
電話による声と音のみで事件を追っていくという異例のサスペンス。

 

緊急通報のオペレーターであるアスガーは元刑事。
訳ありでやりたくない仕事をやってます感を充満させて電話を受けている。
「くだらない通報多いんだなあ~どこの国も大変なんだろうなあ~」と思ってしまうような通報の中、一本の電話がアスガーの刑事本能を目覚めさせる。

 

助けを求める女性の声。
誘拐されている真っ最中に、子供に電話をするふりをして必死に助けを求めてきた。
「子供と話すフリを続けて」と彼女に命じ、なんとか居場所を特定しようとする。

 

見ている方は、すでにアスガーと共に耳をすましながら息を飲んでいる。
すぐさま現場に連絡を入れるが、彼等は思うように動いてはくれない。


刑事本能にスイッチが入ったアスガーは、電話だけをたよりに独力で事件を追い始める。まずは、女性の家にいるはずの子供に電話をかけてみることから――。

 

映像として登場するのは、アスガー以外はまわりにいるオペレーターの同僚のみ。しかし彼等との絡みはほとんどない。
電話越しに聞こえてくるさまざまな場所にいる登場人物たちの声だけで、ハンパ無く緊迫感を煽られる。


アスガーは自身、刑事時代に何か問題を起こしているようで、それに関する大事な出来事が明日ひかえているらしい。事件を追いながら、元相棒や上司と話すことでそれらの事情もいろいろとわかってくる。

 

特殊な設定ながら、この映画に動きを感じるのはアスガーがさまざまな場所や人に連絡し、彼等を動かしたり協力を要請したりするので、1つの所にとどまっている感が薄くなっていくこと。

 

 

この映画を見終わったとき、読書と映画の中間を体験したような感じがした。
誘拐事件という1つの事件が自分の頭の中だけで展開し、映像は自分の想像力のみ。


とは言え、アスガー自身も同じ状態で事件を追っているので、映画を見ている最中は自分が何も見ていないことに違和感がない。
これって凄いなあ…と実感。


しみじみ電話というものの特殊性を感じる。
見えないことのむずかしさ。一方的になる会話。相手の表情や状況を見るということの大切さを思い知らせてくれた。
当然SNSも然り。

 

面白かった?と聞かれて、とにかく「驚いた」と答えた。

 

ふわふわ浮きながら戦うって面白い「ライフ」

SF映画というのはほんとに幅が広い。
うちの娘は「2001年宇宙の旅」とか「メッセージ」がお気に入り。
良いと思う。思うけど、宇宙の旅は途中で寝た。

 

娘は宇宙から地球にやって来る話は好きなのだが、地球から少しでも離れるともうダメなのだそうだ。だからホラー好きなのに、エイリアンは苦手。

 

彼女のお気に入りSFは「マーズアタック」
小難しいのが好きなわけではないのです。
とりあえず地球に来てくれたらいいみたい。

 

 

てことで、「ライフ」
火星から採取したサンプルの中に、未知の生命体が入っていた。
宇宙船の中で観察しているうちに、その小さな生命体は目覚める。
ETさながら、指先で触れ合ったりなんかして、初めての宇宙人との遭遇に喜んでいた宇宙飛行士たちだったが――

 

展開はお決まりで目新しいことはない。
評価や口コミもけっこう辛い。

飛行士たちが間抜けすぎとか、胸糞悪いとか。
確かに間抜けすぎる。でも間抜けすぎてこそ、この胸糞悪い楽しい事態をもたらしてくれるのではないか。

 

この映画で興味深かったのは、スピード感が無いこと。
始終ふわふわと浮きながら行動しているのが、妙にリアルで見てて面白い。
化物と化した生命体に襲われてて、血がドバッと出るのだけど、玉状に浮いていて変に気持ち悪い。

 

真田広之はもっと端役なのかと思っていたけど、しっかりメンバーだし。
なんか違和感は否めなかったけど。全体的にキャラクターの魅力が薄っぺらく感じるのは確か。全然個性が無い化け物が一番個性的だったりする。

 

基本胸糞悪い映画は好きではないんだけど、主人公の1人デビッドが最後にミランダとの会話で言い放つ捨てゼリフはグっときた。
「800億のバカのところには帰りたくない」

 

「ミスト」のラストは嫌いだけど、この映画の胸糞悪さは嫌いじゃない。
そういえば「キャビン」のラストも嫌いじゃない。

 

 

凝った部屋を見ているだけで楽しい脱出ゲーム「エスケープルーム」

謎の招待状に導かれ、命がけの脱出ゲームを体験させられる羽目になった6人。

 

 

「CUBE」を彷彿とさせる登場人物の少なさと設定。
違うところは、CUBEが持つ独特の不気味さと暗さがないこと。
1つの部屋から脱出し、次に待つ部屋は同じような部屋ではなく、まったく造りの違う部屋なのが面白い。

 

灼熱の部屋、極寒の部屋、逆さまの部屋などなど。
部屋の内装とか細かい部分を見ているだけで楽しい。
施された仕掛けや暗号を解いていく設定は、「なるほどなるほど」という感じで素直に入りこめる。

 

冒険ものに独自の不気味さが加わった感じ。
CUBEの顔ぶれがなぜ集められたのかわからなかったことに対して、こちらは彼等に共通点があることに気づく。
過去に壮絶な体験をしてきたからこそ、できることや解ける謎。

 

流行の脱出ゲームを題材にしているとのことだが、確かに複雑なストーリーではないので見やすい。

 

でもラストがわからなかったんよなあ~意味があ。
ストーリーとしては、よくあるホラー映画的な結果で完結しているんだけど、とってつけたようなラストのワンシーンがくっついている。


で、調べてみたらそういう人いっぱいいて、どうやら第二弾が作られるらしい。
やっぱりなあ。ものすごく思わせぶりなラストだもの。

 

ファイナルデッドシリーズみたいなおもしろさがある。
きっと作るの楽しいだろうなあという、ゲーム感覚の恐怖。
第二弾はもういいかなあ~と直後は思ったけど、おそらく絶対見てしまうだろうな。

 

 

ガイ・リッチー好きのための映画「ジェントルメン」

待ってましたの「ジェントルメン」

 

 

クセのあり過ぎる男たちが次から次へと登場して、ハメたりハメられたり、殺ったり殺られたり。
ガイリッチーお得意のクライムアクション。アクション部分は、ステイサムとの映画に任せて、こちらは凝ったクライムストーリーで魅せる。

 

冒頭いきなり出てくるおしゃれなパブ。煮卵みたいなうまそうな卵一個とビールをテーブルに置き、妻に電話する男。背後には怪しい人影が忍び寄り――。


インテリア、それを捉えるカメラワーク、男たちが着るスーツやジャケットのセンス。もうとにかく何もかもおしゃれだ。これを見るだけでも、ストーリーそんなに面白くなくてもいいと思ってしまうもの。

 

 

 

 

学生の頃に大麻の売買の才能に目覚め、大麻キングの地位に上り詰めたミッキー。彼のストーリーを語るのは、怪しい私立探偵。聞き手はレイモンドという男。

 

ストーリー運びは前半、私立探偵の会話の中で進行する。
なので時々訂正シーンなんかがあったりする。酒を飲んだり、便所に行ったり、肉を焼きながら話たりもする。そのへんがまたいろいろと凝ってる。

頂点を極めたミッキーだが、突然引退を表明。麻薬ビジネスを売却することに。
そこから始まる悪党たちの金と権力と名誉が絡んだ駆け引き。
とにかくちゃんと見て、しっかり話を聞いておかないとわけわからなくなる。

 

登場人物たちがとにかくガイリッチーならではの、コミカルで個性的なヤツラたち。
スタイリッシュすぎる麻薬王マシュー・マコノヒー。善良そうなチャーリー・ハナム。セコさ溢れるヒュー・グラント

 

傑作なのは、格闘技ジムの集団。悪いことしながら踊るし、それをまたすぐに悪気なくアップするし。もう本当に若いヤツラったらあ、というガイリッチーの愛情。

 

その愛情を役で表現しているのがコリン・ファレル演じる彼等のお世話役のコーチなんだけど、この人がまたバカなのか利口なのかわからないキャラでいい味だしてる。

 

話はどんどん混迷し、ついに死人が出、ますますややこしくなった状態で、現在の状態、つまり怪しい探偵と聞き手の男の場面へと繋がってくる。なるほどそういうことか――。

 

アラジンの実写化で、全然違う側面を見せてくれたガイリッチー。アラジンももちろん面白かったけど、監督自身もファンにとってもストレス発散の「これぞガイリッチーワールド!」を見せていただけて、とってもストレス解消で楽しかったです。

 

 

民衆目線で怪獣を見る「クローバー・フィールド」

突然襲撃されたニューヨークの街中に、破壊された自由の女神の頭が転がってくる場面が衝撃的なパニックムービー。

 

 

カメラ目線のPOV方式は、ブレア・ウィッチ・プロジェクトで衝撃を受け、RECで恐怖にはまった。パラノーマル・アクティビティは正直なぜか全然怖くなかったので(あくまでも個人的なものですが)、これはどうだろうなあと楽しみにしていた。

 

恐かった。というか、怖さが違う。
ホラー映画のPOVは、不意打ちの怖さで飛び上がる。どちらかというとゲームみたいな。

 

これは息をつめて見るというより、始終ゼイゼイ言いながら見るという感じ。
同じように恐怖の対象から逃げる視点なのに、これまでに比べて新鮮だ。
怪獣ものの、逃げ惑う人々の目線からとらえるという設定がユニーク。

 

得たいのしれない化け物がニューヨークを破壊するという単純明快なストーリーは、監督が日本のキディランドでゴジラ人形を見て思いついたとか。
確かに、民衆がカメラを持って逃げるとこんな映像が撮れるだろう。

 

ロブの栄転を祝う平和なパーティーの最中、突如起こる爆音。そして爆発するビル。
何が何だかわからず、外に出ると目の前に飛んでくる自由の女神の頭部。

 

何が起こったのかもわからず、どこへ逃げればいいのかもわからないパニック状態の映像は、最初あのテロ事件を連想させる感じで、実にリアル。
そして、回し続けるカメラに徐々にチラチラと映り込んでいく化け物の姿に、登場人物たちも、これがテロではないと気づき始める。

 

誘導されるまま逃げていれば、助かったものを、それでは話は進まない。
ロブの携帯から助けを求める彼女からの電話が入り――。

そんな奴ほっといて逃げろぉ!!
と同時に、
待ってましたあ!

 

彼女を救うべく、化け物が暴れ狂う中心地区に突入していくロブ。そして記録するべくカメラ係を始めとして同行する友人たち。

 

スリリングな展開は、飽きない。
飽きないけど、こっちもずーと同行しているので疲れる。
軍隊の忠告を聞かずに振り切っていく場面は、自分だけここに残りたいと思ってしまった。

 

始終ちゃんと見えない化け物の姿にイライラするが、一度だけはっきりと見える瞬間があります。つまり目の前にいるってことで――。
こちら側もちょっと硬直してしまうあの瞬間が、見せ場。