もくれんの映画と読書日記

趣味のかたよった読書と映画鑑賞の日記です。

サスペンスかホラーかラストが楽しみな「ゲスト」

韓国の古典怪談「箪笥」のハリウッドリメイク。
オリジナルを見ていないので、比べることはできないが、あまり期待していなかった分面白かった。

 

 

主人公のアナが精神病院から退院するところから始まる。彼女はかつて病気の母が火事で亡くなる場に遭遇し、病んでしまって入院していた。

 

迎えに来た父と共にご機嫌で帰宅したアナだったが、家には母の看護師だったレイチェルが父の恋人として暮らしていた。姉のアレックスはレイチェルを嫌いヤサグレ気味。

 

それでも新しい暮らしに馴染もうとするアナだったが、気味の悪い亡霊を見るようになる。もしや母?母は何かを伝えたがっている?

 

そんな折、かつてのボーイフレンドが彼女にこっそりと妙なことを告げる。
母が死んだ火事の夜、自分が目撃したことを話したいと――。

 

アレックスとアナの姉妹は、レイチェルに疑惑を感じ、2人で協力して彼女の過去を調べ始める。

 

このホラー、バンバン驚く場面は少ないが、ストーリー的にどう持っていくんだろうと気になるので飽きずに見れる。ホラーというよりサスペンスっぽい。この物語、ある程度予測はつく。
なので、どっちの形で終息させるんだろうと。

 

ホラー的結末か?
サスペンス的結末か?
どっちの結果も予測してみていた。

結果、
どっちでもいえる結末に。
あー、そう来たかって感じ。
ラストもきっちり決めてきたし、秀作だと思う。

 

こうなるとオリジナルも気になるところで、古典怪談が原作となるときっとちょっと違うのだろうな。リングのリメイクの場合もそうだけど、アジアのホラーを欧米を舞台にすると、とたんに雰囲気がガラリと変わる。

 

ストーリーが同じでも、空気感はどうしても持っていけない。なのであのしっとりとした湿っ気や暗さが無い。ワントーン明るくした感じ。
それはお国柄として違うのだから仕方ない。
ジェイソンやフレディがアジアの空気の中では、きっと浮きまくっておもちゃみたいになってしまうような気がするもん。

 

アジアが伝え持っている怪談や伝説はほんとに怖い。
その土地に根付いてきたものだから、生まれ育った者たちならではの肌で感じられる怖さなのだと思う。

 

まだ少女だった頃、テレビでたまたま「女優霊」を見て倒れそうに怖かったことを思いだした。全然関係ない話だけど、ちなみにリングは映画版よりドラマ版の方がだんぜん怖かったです。

役者さんたちの迫力とリアルな不気味さに今みるとけっこう怖い「八つ墓村」

何度か見たことがあって、すごい人たちが出演しているのは覚えてたけど、今回十数年ぶりに見て、双子の老婆の片方が市原悦子さんだと気づいて驚いた。
なんか聞いたことあるぞこの婆さんの声と思ったら、そうだった。やっぱり違うわ、うまいわ。

 

 

 

どうしても金田一シリーズの映画となると、市川監督作品のインパクトが強いので、やはり金田一探偵は石坂さん!と脳が認めたがらないが、今回改めて見ると渥美清の違和感のなさに驚く。逆にあの世界観の中に石坂金田一は合わない。

 

八つ墓村のストーリーは、ちょっと異質でタツヤという青年を中心に展開していく。
身寄りがないと思っていたタツヤの元に、突然祖父という老人が名乗りをあげる。しかし、弁護士事務所で再開した祖父は彼の目の前で変死するのだ。

 

代わりに迎えにきた身内の女性とともに、タツヤは岡山の山奥、落ち武者伝説の残る八つ墓村へと向かう。タツヤはその村の有力者である多治見家の跡取りだった。しかしそこからお約束の連続殺人が起こり、彼はほんとに何もしていないのに恐ろしい出来事に巻き込まれていく。

 

タツヤ役はショーケン(萩原健一)だが、可愛く見えてしまうくらいまわりのインパクトが強い。なんといっても山崎務の狂った演技は圧巻だし、セリフがさほど無いのに迫力すごい。津山三十人殺しをモデルとしたあの事件の場面は怖いったら怖い。

 

感心したのが、この映画はその場面を宣伝的にも押し出していたし、実際撮り方とか妙にリアルで迫力あるんだけど、落ち武者伝説の場面があんなに恐ろしいとは知らなかった。いや知らなかったわけないから、記憶に残っていなかった。

 

夏八木勲の落ち武者怖かったし、逆にCG皆無の乱闘シーンは生々しくて魅入ってしまう。そう、この映画生々しいのだ。殺人の手法がほとんど毒殺なので、死んでいく人たちの演技が一流なもので生々しさがすごい。

 

市川シリーズは、殺され方が残忍だが生々しさは感じない。作りものめいた世界観が逆に面白くハマる。そこに金田一と中村警部たちのコミカルなやりとりが加わって、独特の雰囲気を作り出している。

 

八つ墓村にはコミカルさは一切無い。笑いどころが全く無い。始終陰鬱とした物語展開をコミカルイメージいっぱいの寅さん金田一が治める。コミカルさ皆無の状態で。無個性でひたすら薄い渥美金田一の存在が、また絶妙なのだ。

 

いっしょに見ていた娘の感想「渥美金田一、有りやな」
横溝シリーズの中でも名作と名高いこの映画、作られた時代を鑑みても、確かに名作だ。

 

 

ヨシタケさんの空想・妄想が楽しい「あるかしら書店」

ヨシタケシンスケさんの本を初めて見たのは何かの展覧会だった。もちろん絵本がらみの展覧会だったと思うけど、なんてかわいらしい人物たち…と動揺してしまった。

 

なんで動揺したのかというと、この先この作者の本を買いあさりそうな自分が見えたから…。
絵本好きだけど、この時期ちょっと絵本から離れていたので、知らないあいだにこんな方が登場していたなんて、と悔やんだ。

 

 

この時売店でみたのは「このあとどうしちゃおう」
男の子が亡くなったおじいちゃんの部屋で、一冊のノートを見つける。
それはおじいちゃんが、自分が天国にいったあとの予定やら希望やらを描いたものだった。

 

といっても、してほしいことではなく、やりたいことというのが面白い。
テーマパークみたいな天国の予想図だったり、生まれ変わったらなりたいものの希望だったり――。

 

ヨシタケさんの本は、漫画みたいで読みやすい。
人物もお人形さんみたいなのに、どうしてこんなに表情豊かで人間ぽいのか。
ああこういう顔してる!っていう顔がいっぱい出てくる。

 

子供向けの本が多いということもあって、みんな前向きで明るい。
そうか、子供って、大人って、こんなに豊かな表情で、面白い日常をおくってるんだと思わせてくれる。

 

そう、まさに面白い日常。
その中で、この本はちょっと変わってる。

 

 

本に関わる空想や妄想が散りばめられた本。
「~な本あるかしら」
といいながら、いろんなお客さんが本屋さんに入ってくる。

 

そこには奇妙な本がいっぱい置いてある。
世界のしかけ絵本…という本に紹介されているのは、とび出す絵本からはじまって、溶け出す絵本、食べ出す絵本、駆け出す絵本―というふうに、すべてこんな感じ。

 

個人的に、ほしいなあ~と思ったのが「読書サポートロボ」
ぜひ、ロボと話してみたい。ぜひほしい。

 

気に入った章は、図書館の本たちが主役の「ラブリーラブリーライブラリー」
なんでだろうって考えたら、この章だけ本を扱う人ではなく、本自身が擬人化されていてかわいらしい。


加えて、本好きの人がうんうんとうなずける良い話。
返却された本への質問ページはとても良い。
「読みながら泣いてた?笑ってた?」みたいなこと。
思わず今自分が借りてる本を見てしまった。

 

本屋さんで見かけると必ず手にとってしまうヨシタケさんの本。
面白いので気が付くとにやけている。
こういうときはマスクがあってありがたい。

 

お待ちしてましたナイブズアウト続編「グラスオニオン」

ナイブズアウトの続編を待ち望んでいたので、ワクワク状態の視聴。

「面白い」という感想も聞いていたので、早く見たかったのだが、年末からなかなか余裕の持てる2時間が作れなくて、先日ようやく鑑賞にこぎつけた。

 

 

個人的には前作よりも好きかも。
アガサクリスティを彷彿とさせる設定で、孤島に集められたクセのある人物と呼び寄せた富豪、なぜか偶然的にそこに居合わせた名探偵。
ミステリ好きにはもう垂涎ものです。

 

富豪役にエドワードノートンということで、絶対この人物は一筋なわではいかないな、と察しがつく。犯人であろうとなかろうと、何かしらやらかすややこしい人物であるに決まっている。

 

ブラン探偵のダニエル・クレイグもあいかわらずいい感じの変わり者感で、ポアロ的な活躍になるんだなと思っていたら、この映画そんなに単純じゃなかった。

 

後半に入ったところで、造りがガラリと変わる。えっ?という状況がいきなり始まり、なんともうその時点から前半の伏線回収が始まる。後半は本格推理を伴うサスペンスで、目が離せなくなる。

 

また、ストーリーに関係ないヒューグラントが出てきて、意味深なシーン放り込んでくるし。


ナイブズアウトの面白さは、映画ならではのミステリー内容と構成だと思う。
あり得ない設定や状況、存在しないものを取り入れても嘘くさく感じない。

 

小説だと、ストーリーが面白くてもそういう内容があると、どっか受け入れられない部分が気持ちの中に残ってしまう。アガサクリスティーが面白いのは、ありえない出来事であるにも関わらず、根底にドロドロした現実味があるからだ。

 

今回のグラスオニオンは、まさにその建物じたいがSFチックで、そこにいる古典的なブラン探偵の違和感が相まって新鮮だった。キャラクターの濃さが浮つきがちなストーリーのしっかりとした重石になっている。

 

また次も楽しみにしていいだろうか。
お待ちしております、ジョンソン監督。

いろんな意味で引っ越しが慎重になる日常系ミステリー「Iの悲劇」

題名だけで、怪しい密室殺人の本格推理小説と勝手に思いこんでいた。実は日常系の連作短編小説でした。

 

 

「Iの悲劇」の I は、Iターンのことで、6年前に廃村となった集落に、新しい住人を呼び込み村を甦らそうと試みたプロジェクト。

 

募集により、一人暮らしから家族まで新しい暮らしに希望を抱いた人たちが集まってくる。担当する役所の「甦り課」の万願寺さんという男性を軸に、物語は語られていく。

 

一見無事にスタートしたプロジェクトだったが、やがてそれぞれの移住者にさまざまな問題が発生する。

 

近隣トラブルのメジャーなものから始まって、行方不明になる子供、移住者の懇親会で起きた謎の事故――。

 

なぜこんなことが起きるのか…
疑問を感じながらも、1つ1つの出来事に対処し振り回されていく万願寺さん。

 

派手さはないものの「え、どういうことなんだろ」とそれぞれのストーリーに引き込まれてぐいぐい読める展開で面白い。

 

意外性もどちらかというと地味なんだけど、ラストで明かされる事実にあまりにリアルな現実を突きつけられて、それはそれで衝撃的。この物語の評価の高さは実はここに存在したのだなと気づく。

 

人が生活することの現実。
生活の場を作っていくことで発生する問題。

 

 

 

私ごとだが、
現在、のどかだったうちの近所はものすごい開発ラッシュで、まさにすし詰め状態で家やマンションが建ち始めている。古い一軒の家が壊され、そこに4軒の家が建った。すげえ…ぎゅうぎゅう。

 

住宅増加に対して道の整備がともなっていないので、細いくねくね道は車だらけで、ものすごく怖い。
正直、数年後をめどに引っ越しを考え始めている。

 

さて、どこに移るのか。
何をめどに、どんな希望をもって住む場所を決めるのか。
この小説は、いろんなことを考えさせてくれる。

 

特にIターンする人は、確かに何らかの希望や夢を持っている人が多いのかもしれない。
前に住んでいたところでは出来なかったこと、嫌なことから逃れたかった…などいろんな思いを抱えている人は少なくない。

 

果たしてその夢ってかなうのか?かなえてもいいのか?

動物さんたちといっしょ。
人は群れでないと生きられない。

群れで生きるのは楽しいし助け合えるけど、むずかしいね。

 

探検と怪奇現象を楽しめるタイトルに合わない贅沢B級ホラー「地下に潜む怪人」

まるで少年探偵団の題名のようなタイトル。
このタイトルを真に受けて地下にどんな怪人が潜んでいるんだと期待する人は見ない方がいい。特に怪人なんていないから。

 

地下に潜む怪人 [DVD]

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  • パーディタ・ウィークス
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B級ホラーとはいえ、原題が凝っていて意味が伝わらないというのもわかるけど、もうちょっとタイトルは考えた方がいいんじゃないかな。

 

地下にいるのは怪人というより、得たいの知れない数々の不気味な存在と怪奇現象。
まず見た時、インディージョーンズホラー版だと思った。

 

イランの爆破寸前の遺跡に忍び込み、命がけで暗号を手に入れた考古学者のスカーレット。彼女はかなり強引なのめりこみ突っ走りタイプで、暗号に従い仲間たちと共にパリの巨大地下墓地(カタコンベ)に侵入する。

 

墓地から外れた洞窟へと足を踏み入れた彼らは、そこで恐ろしい怪奇現象に見舞われることになる。前半は特に化け物も怪人も特に登場しないが、洞窟の異常さに気づいていく段階はかなりの緊張感を伴い、引っ張られる。

 

洞窟内で起こる怪奇現象のシチュエーションは、けっこう好みだ。
洞窟の中に忽然と現れるピアノ、突然鳴り響く電話のベル、さりげなく背後を通る人影など、洞窟の暗さと圧迫感は十分な異世界感を満喫させてくれる。

 

当然、この手のホラーにつきものの、グループ全員が生き残るはずないというお約束は守られているが、暗号解読や賢者の石の効力など冒険ストーリーとしても楽しい。

 

確かに口コミでもあるように、説明不足すぎて、なんでそうなったの?なんでわかったんだ?という突っ込みどころは多々あるが、自分の場合はそんなこと正直全然気にならない。ホラー映画は楽しませてくれて、怖がらせてくれればそれでいい。

 

映画でなければ味わえない異世界に連れて行ってくれれば幸せだ。楽しい時間をありがとうと素直に言える見どころ満点の贅沢なB級ホラーだった。

 

 

 

これぞアメリカ!の出来すぎストーリーカーアクション「アンビュランス」

ザ・アメリカ映画!!を存分に楽しませてくれるマイケル・ベイ監督のカーアクション。

 

 

アフガンの帰還兵ウィルは、妻の病の莫大な治療費に奔走するが、どうしても集まらず、血のつながらない兄ダニーに救いを求める。タイミングが良かったのか悪かったのか、ダニーは銀行強盗を計画していた。

 

仲間に加わるよう要求され、善人ウィルは始めは怒って断るものの、どうしてもほしい大金につられ苦慮した挙句、手を貸してしまう。

 

誰も傷つけず、段取りよく成功するはずだったが計画が狂い、ウィルとダニーは警察に追われ、通りがかった救急車を乗っ取り逃走することに。
しかしその救急車には、緊急を要する負傷者が乗っていた。

 

とにかく怒涛のように繰り広げられるカーアクションは、退屈しない。
2時間のアクションはキツイかなあと思って見たが、ダレた頃に必ず爆発か新しい展開が起こり目が離せない。

 

役者さんたちの演技はもちろんだけど、スタントさんたちには脱帽。橋の下をくぐるヘリコプターの場面では、思わず「おわー!」と感嘆。

 

下品な軽口や気の強いかっこいい女性、出来すぎなストーリー、クサすぎる展開はもう何も考えずに楽しめる、贅沢の限りを尽くしたこれぞアメリカ映画なるぞぉーの逸品。

 

ケチャップやマスタードたっぷりの二段重ねハンバーガーと山盛りポテトを存分にいただいたようなアメリカ感で、腹いっぱいになりました。
あー楽しかった。