もくれんの映画と読書日記

趣味のかたよった読書と映画鑑賞の日記です。

カテゴリーはホラーになっているけれど「ずっとお城で暮らしてる」

まさにに題名どおり、ずっとお城のような邸宅で暮らしている少女のお話。
彼女メリキャットの視点から物語は語られていく。

 

 

冒頭買い出しに町に出かけたメリキャットは、心ない言動を浴びせかけられながら怒りと軽蔑をみなぎらせ、必死の思いで帰ってくる。
彼女はなぜかとても嫌われているのだ。

 

そこから彼女は一歩もお城の敷地から出ない。まさに題名どおりずーとお城で暮らしている。いっしょに暮らしているのは、姉のコニーと叔父。
コニーは上品なお嬢様で、叔父は車椅子生活。

 

メリキャットは淡々と家での生活を語る。
読者は何がなにやらわからないまま、三人の会話をひたすら聞いている。
まるで子供のころ好きだった外国の児童文学のような世界観で、コニーの作るお料理は特にそんな世界観を彷彿とさせてくれる。

 

なぜ三人で暮らしているのか、なぜ嫌われているのか、ほかの家族はどうしたのか、などなど、わからないことだらけで話は進むが、
しかし、それらがメリキャットの語る日常の中で少しずつわかってくる。

 

叔父さんが語る昔の話によって、家族はみんな死んでしまったこと。
何者かに殺されたこと。

 

なんとなくこちらが漠然と理解し始めたころ、三人だけの静かな世界にいきなり訪問者が現れる。いとこのチャールズ。
彼の出現が、静かな空間に波風を立て始め、メアリの怒りはますますふくれあがっていく。

 

ホラーというカテゴリーに入れられるみたいだが――
作者は魔女と呼ばれていた作家らしく、日常と狂気の境目の心理描写を得意としていたらしい。

 

確かにお城の住人たちは狂気の境目にいるようだ。
みんながみんなどこかしら変で、メリキャットやコニーがどうなっていくのか、とても気になる。

 

大きな事件はさほど頻繁に起こらないのに、けっこうするすると読めてしまう。
この物語はとても不思議で、ここから物事が展開していくというよりも、ここに至るまでの出来事や事件の方がはるかに大きな物語であるはずなのだ。

 

殺人事件のサスペンスや豪邸に住む一族の歴史、そして叔父さんの話を聞く限りではけっこうドロドロしていそうな人間関係――
すべてを含んだ壮大な物語が完結し、数年後に出された “その後” のような話だ。

 

加えて、この終わり方はどう考えても着地していなくて、気持ちの悪さは確かにホラーといえなくもない。
いや、ここからが本当にホラーになるのかもしれない。
ホラーキャラクターの誕生秘話ってことにもなる。
ほんとに不思議な物語だ。

 

作者も亡くなってしまったということで、できればその後のその後を誰か書いてくれないかな。