もくれんの映画と読書日記

趣味のかたよった読書と映画鑑賞の日記です。

謎と不気味さ漂う美しさ「ピクニックatハンギングロック」

50年以上前に制作された美しい映画。
1900年のオーストラリアで、実際に起こった謎の怪事件をテーマにした物語。

 

 

著名人に聞く好きな映画という企画などで、けっこう出てくる率の多い映画であり、数年に一度は目に入る。見たいなあと思いつつ数十年。
理由の一つに、面白くない人にとってはまったく面白くないという声も多いこともあった。

 

わくわくドキドキの展開があるわけではない、きっとこれもまた雰囲気を楽しむ、ある意味辛気臭い映画なんだろうなと予想していた。
で、2000年超えたこの時代、おうち時間にやっと見た。

 

お嬢様たちが通う全寮制の女子高。
衣装や小物が素敵という評判どおり、1900年代の少女たちの優雅さがメインでもある。ひらひらの真っ白なドレスは、一人ずつ微妙にデザインが違い、お嬢様感半端ない。
これはなんだ制服か?

 

やはり評判どおりミランダは人形のような顔立ちで壮絶美しい。不気味な物語にぴったりな気持ち悪さすら感じる美しさ。

 

彼女たちがハンギングロックという岩山にピクニックに出かける。優雅な午後のひとときを過ごす中、4人の少女が少し離れた岩山の探索を申し出る。

 

許可を得た少女たちは、楽し気に散策をするが背景からは次第に緑が失われ、ごつごつした岩山と日差しと変な色の雲が占め始める。

 

そして少女たちは姿を消す。
その後、後を追ったかのように1人の女性教師も行方をくらます。

 

警察による事件の捜査が始まり、最後の目撃者になった少年や1人だけ逃げ帰った少女の証言をもとに捜索は続けられるが、何も見つからない。
捜査状況と同時進行して、学園の中に巻き起こっていくややこしい事情も描かれる。

 

 

途中で寝てもいいやと思って見ていたが、意外にも最後までしっかりとみてしまった。
予想以上に不気味な映画だった。おそらく少女たちの存在と美しさが独特の不気味さを作り出しているのだろう。

 

オーストラリアで実際に起こったとされるこの物語は、現在に至るまで解明はされていないが、知られるきっかけになったのが小説ということで、フィクション性は強い。

 

オカルト説、誰かに襲われた説、転落死説などいろいろな説が現在に至るまで言われているが、事実が小説や映画通りの設定であるなら完全にオカルトだ。

 

が、実際ひらひらドレスで美少女が山歩きという「なんて無防備な」と思うような状態だったし、山で行方不明になる事件など世界中でゴロゴロあっただろうし、今だってある。

 

ただその中で小説の題材にすべき不自然さは、きっとあったのだろう。
オカルト的怖さよりも、このストーリーには人の行動の不思議さが際立つ。

 

学校のゆるゆる感、証言者たちの信ぴょう性、後の展開を考えると警察はどこまで捜査していたのか、急に一般市民の協力を拒否するような態度を見せたのはなぜなのか、騒ぎになったわりには、記録がほとんど残っていないとされるこの事件。確かに不気味だ。

時代のせいにするほど昔の話でもないと思うし、事件の真相は、作られたストーリーのどこかが破城することによって一気にすべてがわかるのもかもしれない。

 

言えないこと、言ってはいけないことを伝説や怪談にして残しておくというのは、昔から人々が使った素晴らしい常套手段だ。