もくれんの映画と読書日記

趣味のかたよった読書と映画鑑賞の日記です。

「ほの蒼き瞳」で1830年代のドレスの素敵さと夜の暗さで冬を実感

ネットフリックスの映画って今まで馴染めないものが多かったのだけど、これは個人的にしっくり来た。

 

 

陸軍士官学校の死」という傑作ミステリー小説が原作の映画。
読んだのは随分前で、毎度のごとく内容はうろ覚えだったが、面白かったことに間違いはないので、映画でその面白さを再認識したくなって見てみた。

 

1830年ニューヨーク州の冬が舞台。
エストポイントの士官学校で、1人の士官候補生が死体となって発見される。状況から首吊り自殺のように思われたのだが、その死体には恐ろしい謎があった。

 

心臓をくり抜かれていたのだ。対応に苦慮した学校側が、1人の引退刑事にひそかに事件の解決を依頼する。

 

娘を失い、酒浸りの日々を送っていた刑事ランドーは、地道な捜査を開始する。その過程で彼は1人の士官候補生と出会う。事件に興味を持ち、頭が良く切れ者だった彼にランドーは協力を要請する。

 

その人物は、ミステリー小説の創始者エドガー・アラン・ポーの若き日の姿だ。ポーは暗号の解読や死体になった青年との交友関係を調べていくうちに、美しい娘と出会い恋におちていく。

 

しかし、またもや心臓のない死体が出現し、恐怖に包まれる学校といらだつ幹部たちの中で、ランドーは窮地に立たされる――

 

 

地味で静かな展開でありながら、派手な死体に暗号解読などミステリーならではの面白さを堪能できる映画だ。

 

特に、夜の暗さが絶妙に良い。
部屋の中にいくつも照らされたろうそくの明かりをメインに、まわりの光景ほとんどが闇に紛れて見えない雰囲気が、実に良い。

 

そうだ、夜はこんなに暗くてあたりまえなんだ、ということを体感させてくれる。関係ないけど、江戸代の庶民の家のろうそくや提灯の灯は恐ろしく暗かったんだということも思い出した。

 

1830年代ということで、女性たちはまだドレス。屋外では暖かそうだけど重そうなぼわぼわのドレスに、これも重そうなボンネット。でもベルベットのごついリボンがかわいい。

 

屋内でのドレスは袖のふんわりやゆったりを強調したもので、ボリュームがある。まあこれもお金持ちのお家の話な上に、女性の登場人物は限られているので少ししか楽しめないけど。

 

ランドー刑事を演じるクリスチャン・ベールも背丈があるのでシックなスーツが決まっていて見栄えがする。士官学校の生徒たちのブルーの冬の制服もオシャレ。本では味わえない映画ならではの楽しみ方だと思う。

 

暗くて重いストーリーで、派手なアクションは無いので、見る人を選ぶ映画ではあるかもしれない。でもミステリー映画としては馴染みやすいのではないかな。

 

スパークリングワインをを脇にコタツに潜り込みながら、冬を実感できる地味なミステリーで過ごした今年のクリスマスでした。