もくれんの映画と読書日記

趣味のかたよった読書と映画鑑賞の日記です。

汚くて渋くて大人の男のスポコンコメディ

なかなか見る機会がない映画というのがある。

若い時は映画雑誌とか買いあさってむさぼり読んで、情報集めをしていたが、今はそういうヒマも根性もなく、のんびりとした映画好きな毎日を送っていると、向こうから強制的に宣伝をしてくれないと知らないまま過ぎ去ってしまう映画も多い。

 

そんな時、まわりに映画好きな知り合いがいると「おすすめ」してくれるからひじょうにありがたい。

 

ミーン・マシーン [DVD]

ミーン・マシーン [DVD]

  • 発売日: 2012/11/22
  • メディア: DVD
 

 

「ミーン・マシン」のように、主演「ヴィニージョーンズ」
誰だっけ?

ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」「スナッチ」のあの人って聞くと、「あー、あの人!」という感じで思いだした。
こんなふうに脇役っぽいイメージの人が、初主演の映画とかになると、見逃す場合はとても多い。

 

それでもあまり期待しないで見たのだけど、これが大当たり。ロックストックやスナッチの雰囲気そのまま、いやもっと単純に笑えるかも。男ばかりのあのお馴染みの雰囲気で、なんとスポコンコメディなんですねえ、これがまた。

 

舞台は刑務所。
新入りのダニーは、元サッカーのスター選手だったが、八百長事件でサッカー界から追放される。やけになり、乱れた生活の果てに障害事件を起こし刑務所へ。

所長がサッカー好きで、自分のサッカーチームのコーチをするように言われるが、ダニーは断る。この所長けっこう公私混同でかなり胡散臭い人。

お決まりどおり、刑務所の面々は超絶個性的で、ありがちな新入りいじめでボコボコにされたりと、ダニーにとっては過酷な時間が続く。

しかし、それがなければ後半の面白さはやってこない。
成り行きで、刑務所の看守チーム対囚人チームのサッカー試合が行われることになり、ダニーは囚人チームを率いて戦いに挑むことに。

ここからはもうスポコン!
ややこしい奴らが仲間になり、個性を活かして実力を発揮し、カッコいいことこの上ない。

目新しい部分は皆無といっていいほど、お決まりの流れ。でもこれが男ばかりの小汚くてシャレた世界を描く「ガイ・リッチー」総指揮の元に展開されると、こんなにもイキで楽しい映画になるものか。

 

 

 

予想外で嬉しかったのは、ジェイソン・ステイサムが出演していたこと。
囚人の1人で、あまりに凶暴すぎるので特別な囲いの中に収容されている男。
金網の中でもくもくと鍛えている切れてるヤツがジェイソンステイサムとわかった瞬間、笑った笑った。
もちろん試合で暴れまくるが、もうめちゃくちゃ。

 

ディズニー映画も手掛けるガイリッチーだけど、彼の本質はここにある!と言ってしまいたくなるような、男の世界。美しくロマンチックな映画が好きな人はダメかもしれない。

 

少林サッカーを初めて見た時、転げ回って笑った記憶がよみがえる。そこまで単純に笑える映画ではないけれど、どちらかというと大人のスポコンコメディかな。「メジャーリーグ」をもっと渋ーくこじんまりとさせた感じ。スポコン映画はルールを知らなくても笑える、楽しめる。

 

またロックストックやスナッチが見たくなりました。

アメリカ版「学校の怪談」は「スケアリーストーリーズ」

“禁じられたベストセラーの映画化” なんてことを公式ホームページに書かれていたりすると、見ないわけにはいかない。

 

 

 

ハロウィンの夜、3人の仲良し少年少女たち(中学生?高校生?)は、いじめっ子にいつもの仕返し作戦を試みる。しかし返り討ちに合い逃げ惑っているところを、1人の青年(高校生?)に救われる。

彼らは意気投合し、町で幽霊屋敷として名高いべロウズ家を探検することに。そこで発見したのは、べロウズ家の娘サラが書いたとされる物語集。彼女は写真すら封印されるほど謎に包まれた存在だった。

物語好きの少女ステラは、喜んで本を持ち帰り読んでみる。怪談集ともいえる奇妙なその物語を読み進めるうちに、ラスト空白のページにたどりつく。

しかし、真っ白な紙面に突然浮き上がってきた赤い文字…。本が勝手に物語を書き始めた…。

 

本はこうして次々に短編物語を書き進めていくのだが、その主人公たちが実際にサラたちの仲間。そして予想どおり物語どおりの展開で彼らは順々に怪奇現象に見舞われていく――という展開。

 

スケアリーストーリーズ 怖い本 (1) いばりんぼうをつかまえた

スケアリーストーリーズ 怖い本 (1) いばりんぼうをつかまえた

  • 発売日: 2020/01/16
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

原作となった禁じられたベストセラーというのは、実は児童書。ということで、そこまでおぞましいシーンはないしドロドロした感じはない。むしろ、ITやスタンドバイミーのような爽やかさすら感じる。

ただ…変に怖い。
高度な特撮のなせる技ということもあるし、恐怖の実体がじわじわ近づいてくる感がとてもうまい。
チャックが対面する化け物なんて、明るいところでみたらかなり間抜けな感じの化け物なのだけど、あの状況に自分が置かれたらきっと気が狂う。

映画の中で、「あ、この話聞いたことがある」「子供の頃聞いてとても怖かった」という登場人物たちのセリフが出てくるが、原作となった本は都市伝説的な内容を集めた感じの物語集だそうだ。

1980年代に出版されたもので、健全な子供たちを恐怖のトラウマにさせる邪悪なものとしてとらえる風潮もあったのだろう。
その辺から来た禁じられたベストセラー。
でも子供たちは禁じられたものが大好き。ということでベストセラー。

 

学校の怪談

学校の怪談

  • 発売日: 2015/08/01
  • メディア: Prime Video
 

 

すぐに思いついたのが、「学校の怪談
あんな感じの短編集だったのではないかな。

古いところでいえば「口裂け女」「トイレの花子さん」みたいな、あんな感じの都市伝説や民間伝承的な怖い話を原作にしてアレンジした映画といった感じ。

今から見ると比べ物にならないほど、かわいいとさえ言える伝説たちだが、この映画の化け物たちは、驚かせるだけでなく、相手を容赦なく殺す。ある意味とても現実的な恐怖といえる。

いろんなものがいっぱいいっぱいになった今の世の中で、どんなにドロドロした物語よりも、どんなにおぞましい怪物よりも、子供たちも含めみんなが怖いのは、容赦なく何のいわれもなく殺される恐怖。

 

 

江戸時代の妖怪たちは、実際にあった出来事や現象がモデルになったとされているが、化け物たちはその時代を映し出すというのは、確かにいえると思う。

となれば、令和の「百鬼夜行絵巻」に書き加えられるのは妖怪“コロナ”か――。
なんて、ちょっとあざとい結末だな。

 

本当に怖いものは、この映画の結末。
べロウズ家のサラはなぜ封印されたのか?
なぜ怨霊になったのか?
一番邪悪だったのは誰なのか?

 

そして、もう1つ意味深なものがこの映画には挟み込んである。
ところどころ出てくるニクソン大統領の映像と演説。

ベトナム戦争終結宣言を出したニクソン
映像が意味するものは希望なのかな?

理不尽な恐怖と戦う子供たちにさりげなく与えられた、わずかな希望なのかな…。

 

「SPY スパイ」はカッコいい男たちが色あせる

この映画の存在去年まで知らなかった。

日本未公開ということもあるのか、まったく自分の映画アンテナに引っかからなかった。

ジュードロウとジェイソンステイサムが共演しているスパイ映画なんて、絶対観ないと損でしょう!

ということで見ました。

 

SPY/スパイ  (字幕版)

SPY/スパイ (字幕版)

  • 発売日: 2016/07/20
  • メディア: Prime Video
 

 

正直、期待半分で、コメディを単純に楽しませてもらおうと思っていたのだけど、
面白過ぎた。

ジェイソンステイサムのバカスパイ振りは最高だったし、ジュードロウのナルシストスパイもぴったりだったたけど、それを上回ったのが女たちのインパクト。

 

CIAの分析官で内勤業務だったスーザンは、相棒を失うというきっかけから現場で働く捜査官、ズバリ!銃を片手に走り回る憧れのスパイになる。

核爆弾を手に入れようとする怪しげな奴らと、売ろうとする怪しげな奴らを相手に颯爽と戦うスーザンだが、ぽっちゃり系でテキパキできない、映画の中の女性スパイのようなカッコよさなんて微塵もない。

でも、そのスーザンがめちゃくちゃかわいくてカッコいい。
で、またすごく強い。銃よりも格闘がすごい。頭も切れる。判断力も抜群。
メリッサ・マッカーシーがすごくいい味出している。

 

友人、上司の女たちもいい味出しすぎ。
でもとくにどこが?と言われると困ってしまう。
強いていうとどこにでもいそうだから。
ようするにどこにでもいそうなおばさんたちなのですね。

 

CIAというものすごいところで働きながら、ものすごく普通のおばさんしているという特殊な状況が楽しいのかもしれない。

 

 

 

コメディだからぶっ飛んだストーリーと展開なのだけど、根底にスーザンたちの健気ながんばりが見えるから、見た後心に何か残る。
「がんばらなきゃなあ~」と同じおばさんは思ってしまう。

 

国際的なスパイになれて夢がかなったスーザンだけど、けしてサクセスストーリーっぽくないのは、ラストにスーザンが恋する相手にかける言葉と態度からも感じる。

何もかも手に入れてしまったら、きっと人生なんて面白くない。
ぐいぐい酒飲みながら、友達と愚痴言ったり文句言ったりしている時間がとても幸せなのだ。

普通のおじさんおばさんで無くなってしまったら、きっと失うものも大きいような気がしてくる。かっこよすぎる、浮世離れしすぎると、逆にきっとカッコ悪くなる。

 

けど、浮世離れしすぎてる敵の派手な女もかなり面白い。
目くばせ1つで簡単に部下を制裁したり、贅沢三昧やりたい放題のろくでもない女なのだけど、嫌いになれない独特なキャラの濃さ。

 

ジュードロウとジェイソンステイサムが色あせて見えてしまうほどの、いい女たちに笑わせてもらいました。

楽しかった!

 

 

「マネーボール」でプロ野球に夢を見たい

野球ファンとしては、やはり見ておかなければなるまい。

 

マネーボール [Blu-ray]

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  • 発売日: 2012/03/21
  • メディア: Blu-ray
 

 

メジャーリーグが舞台の映画は明るく華やかな表舞台のぶっ飛んだ話が多いイメージだけど、これは地味な裏側の話。

メジャーリーグの中の極貧球団「アスレチックス」は、いい選手を育てても、金の力でどんどん有名球団に引き抜かれていく。

もはや貧乏球団が勝てる術はないと落胆していたジェネラルマネージャーのビリーは、“セイバーメトリクス”というデータ野球を取り入れてチーム作りを始める。

選手の評価を出塁率などのデーターで判断し、格安の選手たちを取り入れていく。必ず反対する古参の連中との確執、他球団との選手の売り買いの様子は見ていて飽きない。長い時間にも関わらず、退屈する間がなかった。

 

 

 

たぶん、プロ野球に興味のない人にはいまいち――どころかさっぱりだったろう。プロ野球が好きでも、自分の好きな球団の勝ち負けだけで、他の球団のことはどうでもいいタイプのファンにも絶対評価は得られなかったと思う。

この映画に華やかさは無いからだ。結果を言うとビリーの試みを功を奏する。そのあたりは劇的なのだけれど、バリバリのエンターテインメントさは感じない。それはやはりこれが現実にあった話であるというところの、シビアなお金の話に終始するからだ。

それにしても、メジャーリーグのゼネラルマネージャーと日本のそれとは、絶対違うものなのだろうなあと思った。ビリーの一存で選手をバンバン首にし、監督さへもだまらせてしまう権限と、それに伴う責任感と根性の強さがあるとは思えない。

日本の場合(もちろん一概には言えないけど)、そんな権限を持つ者は、もっと違うところに存在するように思う。

 

 

お金と経営、生活の現実をプロ野球という夢の世界で見せつけられる話ではあるが、ラストはやはり「お金じゃないよ」というところに持っていくのが、アメリカっぽいなあという感じ。

「ほんとにあった話?!」と驚かされる内容だけど、映画のラストの字幕だけで報告されたビリーの選択。冒頭の字幕「人はプロ野球に夢をみる」がここでドーンとこたえてくる。

ドクタースリープで映画を2本みた気分

2本の映画を合体させたような奇妙な構成で、評価が分かれるのもわかる気がする。

「シャイニング」の思い入れが激しい人、見たこと無い人、はるか昔に見たけどすっかり忘れちゃった人、だいたいそんな括りで評価が分かれがちだけど、これに関しては当てはまらない気がする。

 ずばり、人による。

前半でまず戸惑うのは、少年ダニーが持っていた“視える”という霊能的な能力の展開と、周りで繰り広げられていく化け物の跋扈が、頭の中で分離してしまうということ。

この化け物たちはかつて異能力を持っていた人間であったということを忘れてしまうほど宇宙人的で、それと戦う超能力少女もまた存在感満載で、ワクワク感はあるけど、ホラーのゾクゾク感はない。
でも内容は面白くてこれがシャイニングの続編であることをすっかり忘れていた。

 

大人になったダニーは、アル中ですさみきった人間になっているけれど、なんでそんなにすさんでしまったのか想像するしかない状態で、いまいちぴんとこない。

で、あんたは霊が視えるだけじゃなかったのかと突っ込みたくなるくらい、恐ろしいパワーを持つ超能力者になっている。

で、少女とダニーおじさんが力を合わせて戦うわけだけれど、化け物グループの最後の1人が残るまで、シャイニングのことは頭に過らなかった。

 

 

そして後半。
ダニーが最後に戦いの場に選んだのがあの忌まわしきオーバールックホテル。
ホテルに向かう道の上空からの映像で、一気に脳がシャイニングに持っていかれる。

見たことのあるカットと音楽は、ゾクゾク感を伴って一気にホラーの世界に心を引き寄せる。

とにかくここからは、出てくる登場人物、場所、小道具にいちいち「ヒャーヒャー」喜び、あまりのサービス満載に戦いのストーリーが半分以上頭に入ってこない。

ダニーがかつてここで起こった事件を回想するカットは、前作のものも混じっていると思っていたのだけど、なんと新たに同じものを撮り直したのですね。ええー!とびっくりするほどそっくりなカットも。

キューブリック映画好きの変人(同類の人すいません)の娘が、化け物のリーダーがかぶっている帽子は、「時計仕掛けのオレンジ」のオマージュだと叫んでいましたが、そうなのでしょうか。

 

 

DVD鑑賞は、メイキングも楽しみの1つなのだけど、監督が嬉しそうに三輪車に乗って、あのお馴染みの模様のカーペットの廊下を走り回っている姿はうらやましかった。

ーやってみたい。

そして、何より気になったのが、原作者のスティーブン・キングがコメントしている場面で、彼が着ていた「オーバールックホテル」のまるでおみやげ用みたいなさりげないTシャツ。

ーほしい。

今更ながらバタリアンの意味を初めて知った。

今でもゾンビ映画の名作やランキングとなると、かなりの頻度で登場する「バタリアン」。

 

バタリアン [DVD]

バタリアン [DVD]

  • 発売日: 2004/04/02
  • メディア: DVD
 

 

オバタリアン”という当時の流行語の元となったことでも有名。
この映画を初めてテレビで見たのは、いくつの時だったのかはっきりしないのだけど、「面白かった」という印象だけは覚えていたので、いつかまた観ようと思いつつ、なかなか機会がなかった。

 

今回長くてヒマな連休にレンタル。
人気映画は回ってこないこの時期だけど、バタリアンはさすがに速攻来たぜ。

 

人間の死体や動物の死体が新鮮なまま保存されている医療関係の会社。そこで働くことになったフレディは、ゾンビ映画「ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド」が実話であるという話を上司から聞かされる。その時の死体が今もこの会社に保存されているのだと…。見せてやるという上司について地下室に下りていったフレディの目の前に信じられないものが容器に保存されていた。しかしよりによって保管の容器からガスが漏れ、2人はそれを全身に浴びてしまうことに…。

その後はお決まりの展開で、墓場に蔓延したゾンビガスが、みごとに大量のゾンビを出現させるという流れになっていく。

 

 

で、今回初めて知ったこと。今更ながらのことだと思うので、お恥ずかしいのですが、この映画が「ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド」のパロディだということ。
なるほど、今見ればよくわかる。たぶん当時は、ゾンビ映画が苦手だったので何にも知らずに素直な心で見て、面白かったんだろう。

いろんなタイプのゾンビが出てくることで有名なこの映画の中でも、やっぱり極めつけのスターは中盤に出てくる“おばんば”ゾンビ。くねくねと骨を動かしながらしゃべるゾンビは、その特撮技術と共にかなりのインパクトがあったと思われます。
そうなんですね。これに出てくるゾンビしゃべるんですね。

 

もう1つ初めてわかったこと。
字幕の中では「バタリアン」と呼んでいるにも関わらず、実際のセリフの中に「バタリアン」という言葉がまったく聞こえてこない。英語はわからないけど、それでも「あれ?」と思って何度も聞きなおしたが、やっぱり出てこない。

後で調べると、「バタリアン」というのは邦題だったということを知って驚き。
原題は「リターン・オブ・ザ・リビング・デッド」。
バタリアンというのは配給会社が、独自につけた日本用の名前だった。これも知らなんだ。


で、どういう意味なのかというと「大群」という意味の言葉なのだとか。確かに納得。これに出てくるゾンビたち、常に大群。しかも動くスピードがめちゃめちゃ速い。助けを呼んでも、警察が来ても、あっという間に大群ゾンビに襲われてやられてしまう。何の役にもたたない。拳銃もってようが、車に乗ってようが関係なし。

 

 

邦題は基本気に入らないことが多いけど、この映画に関しては文句が出てこなかった。まさに彼らはバタリアンなのだ。
どんな武器を持っていても、彼らの数の力には太刀打ちできない。
大群の恐怖を表すゾンビ、それがバタリアンだった。

 

数の力は強い。強いけど怖い。
一匹だとなんてことも無いバッタも、大群になると人間の生活や地球の環境にさえ影響を与える凶器になる。

今この時期の地球は、世界のいろんなところで、いろんな大群が生まれやすいように思う。それってすごく恐ろしい。誰もが不安で攻撃的になっている状況の中では、簡単に襲われ食われてしまう。
時期が時期だけに、暴れ回るバタリアンの大群を見て、予想外にいろんなことを重ね合わせて考えさせられた。

 

バタリアンがゾンビであれ、人間であれ、どっちが正しくても間違っていても、結局この映画のラストはーー

 

それが真実なのですね。

 

 

「甲賀忍法帖」の荒唐無稽で壮絶な忍者の魅力に酔う!

「忍者!」「伝奇!」といえば“山田風太郎”といえるほど、現代の忍者像に影響を与えたその世界のパイオニア的存在。

しかし私自身は、山田氏のもう一つの世界である歴史もの、時代ものが好きなので、どっちかっていうとそちらの方に傾倒していて、忍者ものはさほど多く読んでいなかった。

魔界転生」と「明治十手架」くらいなかあ。(もうこの2つは超ド級の面白さ!)

 

で、今回数ある忍法帖シリーズの始まりにして傑作の「甲賀忍法帖」を読んだ。
旅先で入ったいい感じの古本屋さんで見つけたもの。

ここんとこ面白くない本ばかりに当たっていたので、間違いのないものを読んで気分を盛り立てようと家の中の未読の積み上げ本から選んだのだけど、大正解。
盛り上がるったらないわ。しんどい現実から大逃避させてくれる夢の世界。伝奇ものは正直ほとんど読まないのだけど、風太郎忍法は別。

 

甲賀忍法帖 山田風太郎忍法帖(1) (講談社文庫)

甲賀忍法帖 山田風太郎忍法帖(1) (講談社文庫)

 

 

ストーリーとしては単純。長年の宿敵である甲賀一族と伊賀一族が死闘を繰り広げる物語。敵対していた甲賀と伊賀。しかし突如出現してしまったロミオとジュリエットのような恋人たちのおかげで、不承不承仲直りしなければならない状態になっていた両一族だったが。


突然降って湧いた徳川家康の荒唐無稽な愚案。
世継ぎを選ぶくじ引き代わりに、甲賀と伊賀を戦わせるというわけのわからないもの。

しかし、悲劇的なのはロミオとジュリエットの二人だけで、元々仲直りなんぞしたくもないまわりの者たちは、嬉々としてこの命をかけたくじ引き合戦に挑んでいく。

 

正直、この物語はとても不思議な造りになっていて、主人公は誰?となると、浮かばないのですね。当然恋人同士の二人であるんだろうけど、ものすごく影が薄い。二人の持っている術が派手に戦わないものなのでしょうがないともいえるのだけど、まわりの忍者たちが壮絶で人間離れの過激さなので、薄くなること否めない。

 

蝶を操るもの、顔を変えられるもの、体を変形させてどこからでも逃げ出せるもの、体中吸盤のようになっているもの、
なんてまだまだ序の口で、

ナメクジみたいに体を溶かすことができるもの、情事に誘って興奮した吐息により毒殺するもの、究極が、切られても刺されても体を再生させることができる不死の忍者。

あり得なさ過ぎて面白すぎる。


全員無敵、絶対死なないなんてどうやって戦うんよ?!
と思うのだが、このストーリーの巧みなところは、彼らが実に合理的な方法で相手をやっつけ、そしてやられていくこと。
それぞれの特異な術が、思いつきのいい加減なものではなく、納得のいく方法で巧みに弱みに付け込まれることに感心させられる。

 

SHINOBI [DVD]

SHINOBI [DVD]

  • 発売日: 2006/02/18
  • メディア: DVD
 

 

2005年公開の映画「SINOBI」が「甲賀忍法帖」の原作を元にしているとは知らなんだ。正直見てないので、何とも言えませんが、これ読んでからだとちょっと見てみたい。
評価は賛否両論なのだけど、山田風太郎氏の原作はしょうがないのですね。
インパクト強すぎて、頭の中で壮大な世界を描きすぎてしまうから、どうしても納得させられる映画は難しいと思う。

 

でも読んだら絶対「映像化してほしい!見たい!」と思わせるのが、スピードとリアルに満ちた山田ワールドの魅力。

だからね、レビューにも書いてあったけど、別のものだと思えばいいんです。
原作はいったん頭から外し、映画として楽しむと面白いはず。
魔界転生」もそうでした。当然原作の迫力には到底かなわない。
でも、面白かった。あれの場合、役者さんたちの為せる技でもあるけど。

 

しばらくはまりそうだな。忍法シリーズ。
世界中にその魅力を伝えた山田風太郎ワールドの忍者たち。
しばし、コロナと戦う我らにも力を!