1800年代に発表されたイギリスの恋愛小説の名作「高慢と偏見」
有名だけど読んだことない。
しかし、それにひとたび“ゾンビ”とつけば、俄然興味が湧くのは必須。
女性にとってどこの誰と結婚するかが、人生を決める時代。
今でも大して変わらないと思うが、自分で稼いでたくましく生きるなんてできなかった時代なら、確かに良き結婚相手を獲得するのは運命をかけた戦い。
好きだ嫌いだなんて言ってられない。
年頃の5人姉妹にとっては、家族ともども大変なこと。
「高慢と偏見」は、長女のジェインと次女のエリザベスが資産家の舞踏会に出かけ、そこで出会った2人の男性と恋に落ちる話。主役はエリザベスと富豪ダーシー。2人はお互い気になりながらも、プライドや偏見によって、さまざまな誤解を招きすれ違っていく物語。
見ていてヤキモキするよくある恋愛ストーリーですね。
しかし、この映画ではそこにゾンビがプラスされる。
村ではウィルスに感染したゾンビたちが、人々を襲っていた。
冒頭から、人に混じってくつろいでいるゾンビを、ハエで暴くダーシーの場面から映画は始まる。
そんな生活環境の中での恋愛は大変で、舞踏会にもゾンビが乱入。
とたんに姉妹たちは得意のカンフーと剣術で勇ましく戦う。
さっきまでの可愛らしくエレガントだった様子なんて、一挙に吹っ飛ぶ。
『シンデレラ』のリリー・ジェームズが、まくり上げたドレスの下、ガーターリングに装備された剣を取り出すシーンのかっこ良さったら。
両手に剣で、ズッバズッバゾンビを切り裂いていく。
なぜ東洋武術?という疑問はどっかに飛ばすことにして、とにかく女性たちのカッコよさが光る。
その戦いっぷりに、惹かれるダーシーたちなのだが――。
「ゾンビ映画なので、けっこう残忍なシーンあり」というのをどっかで見たけど、どこにそんなシーンがあった?というのが感想。
まあそれは人によりけりだと思いますが。
他のゾンビ映画と違って、ゾンビたちがヴィクトリア朝の衣装をちゃんと身に着けているというのもあるだろうけど、グロテスクさはさほど感じなかった。
ストーリーは最終的にゾンビたちとの全面戦争に突入していくのだが、基本的に「高慢と偏見」の物語から逸脱していない。ゾンビとの戦いの行方よりも、けっこうダーシーとエリザベスの恋の行方の方が気になっていたりする。
これはまごうことなき、恋愛映画だ。
恋愛ものが苦手な自分でも楽しく見せてもらえた。
だからといって「高慢と偏見」のオリジナルを見たいかといえば、それは無理。
やっぱりゾンビとの戦いの渦中にある2人でないと、
ホラー好きの心はときめかない。