もくれんの映画と読書日記

趣味のかたよった読書と映画鑑賞の日記です。

大人の女性にリアルなコメディ「ニューヨーク最高の訳あり物件」

見終わってから知った。
これアメリカ映画じゃなかったんだ。

 

 

元モデルでデザイナーのジェイドは、電話一本で夫ニックに捨てられる。
どうやら若いモデルの彼女ができたらしい。
ニックは女ったらしで、実はジェイドも前妻からニックを奪った略奪婚。

 

落ち込むジェイドが帰宅したニューヨークの高級アパート最上階に待っていたのは、ニックではなく、なんと前妻のマリア。
彼女の言い分は、部屋の半分は自分のものだということ。
てことで、彼女は居座ることになる。

「私もちょうど10年前の40歳の時に旦那に捨てられた」というマリアの言葉から、2人の年齢は40歳と50歳。
この微妙な年齢が、コメディをあまり見ない自分としては気になった一因。

 

男をめぐる妙齢女性の壮絶バトル! からの、結果意気投合して女たらしをこらしめる!というのが、想像できるストーリーで、確かに基本はそんな感じなのだけど、この映画がちょっと違うのは、2人の妻としての生き方。

 

ニックと結婚しても子供はなく、人気デザイナーとして第一線を走るジェイドと、ニックとの結婚で授かった子供を育てるため教師という職業を退いたマリア。
2人のコミカルな対立の背景に、もう若くない2人の女性のこれからの生き方が現れてくる。

 

いつまでもセクシーな大人の服を作りたいのに、路線変更を迫られるジェイド。復職の面接で鼻であしらわれ、ブランクの歳月を身につまされるマリア。
そこにシングルマザーであるマリアの娘や孫も絡んできて、よけいにややこしいことに。

 

ハリウッド映画なら、この設定だともっとド派手で大げさに展開して、コメディのお約束の下ネタなんかも連発しそうだけど、この映画の制作はドイツ。
どうりでコミカルでありつつ、やけにリアル。

 

おそらくほとんどの女性がジェイドではなく、マリア。
そしてほとんどの女性がジェイドに憧れる。
それでも「子供はほしかった?」ときくマリアに、「もちろんよ」と切なそうな表情で答えるジェイド。

 

どんな生き方がいいのかなんて絶対答えは出ない。
2人の生き方の両方の条件を持ち合わせることになったのが、マリアの娘さんアントニア。
彼女が出した答えは――。

 

実はニューヨークの訳あり物件なんて、まったくの邦題で、原題は「ニックを忘れろ」。
完璧忘れてました。薄すぎるニックの存在。

 

ニックのことを覚えていられるほど、妙齢の女性はヒマじゃない。
私たちにはまだまだこれからやりたいことがいっぱいある。