不気味な風船、黄色いレインコート、自転車――これは『it』のオマージュか
と思っていたら、原作はスティーブン・キングの息子さんジョー・ヒル原作。
まあ、映画になると関係ないのだけど、ストーリーや雰囲気やいろんなもの含めて多分にitだなあ。
少年たちばかりが行方不明になり続ける町。
主人公の少年フェニーのまわりでも、知り合いが行方不明になる。
フェニーは華奢で軟弱そうなイメージで、ちょっとイキってるグループに追い掛け回されて、便所に逃げ込んだりしている。
でもフェニーには最強の友達がいた。向かうところ敵なしのロビン。彼のおかげでグループはフェニーに手が出せない。
しかしそのロビンでさえも、ついに行方不明になってしまう。
ロビンがいなくなったフェニーはたちまちグループに袋叩き。でもそれなりに立ち向かうフェニーの姿に、腕力はないが気持ちで負けてない子だなあと、見ているものは思う。
そして石を武器に助太刀に乗り込んでい妹グウェン。この妹が実にいい味を出している。いい味どころか、物語の重要人物となる。なんと、彼女は夢で真実を見ることができる能力を持っていた。
そしてついに、フェニーも誘拐されてしまう。
物語はここから始まるといってしまってもいいくらい。ただ、これまでの一連の出来事や場面、彼らが言ったセリフの1つ1つが、これから展開する出来事の伏線となっている。
フェニーが監禁された地下室の部屋には、古めかしい黒い電話があった。恐怖に打ちのめされているフェニーの耳に電話のベルの音が鳴り響く。もう繋がっていないはずの黒電話から。
ジュブナイル的といってもいいホラーなのだけど、itなんかも含めて、心の奥底から引っ張り出されているような恐怖心を感じる。
オープニングタイトルの映像は、みんな血を流している子供たちで、正直不気味だ。
少年少女たちが中心のこの手の物語は、解決しつつも、もの悲しさや切なさを残す。特にこの映画は、子供たちの流す血をものすごく強調する。その赤黒さと電話や風船の黒が対比してて、鮮やかで不穏だ。
血を流しつづけなければいけない子供たちの将来と世界を突き付けられていると、この際言ってしまいたくなる。
とはいえ、自分にとっては好みの映画で、面白かった。
イーサン・ホークが変態をやるというので見たんだけど、ほんとにこの人はいろんな役やってくれるんで楽しいわ。
上半身裸で、どーんと椅子に座って少年を待ち構えているカットは、笑った。
ほぼ顔が出ないんで、イーサンホークでなくてもよかろうと思うような役なのに、あえて楽しんでらっしゃる感が出てる。
後で調べてわかったんだけど、この原作発売された年にしっかり読んでいた。なのに微塵も覚えてなかった。我ながら引くわ。