もくれんの映画と読書日記

趣味のかたよった読書と映画鑑賞の日記です。

サービスエリアから忽然と消えた彼女「ザ・バニシング 消失」

めずらしいオランダ映画のサイコサスペンス。

 

 

キューブリック監督が最も恐ろしいと絶賛した映画。
サービスエリアで飲み物を買いにいった恋人が、いつまで待っても戻らず、そのまま忽然と姿を消してしまうという考えただけでも恐ろしい内容。

 

待って待って待ち続ける彼がとにかく哀れで気の毒。
彼女にいったい何が起こったのか――


いろんなことを考える。人であふれているサービスエリアで誘拐?
自ら失踪?とてもそんな雰囲気ではなかったし、それにサービスエリアからどうやって?
彼女はただ飲み物を買いにいっただけなのに。

 

サスキアが消えてから3年の間、レックスは彼女を探し続けるが、いっこうに手がかりはない。そんなある日、サスキアの行方を示唆するような奇妙なメッセージが届いた。

 

派手な展開は無く、どちらかというと地味すぎる感じなのに、なんともいえない薄気味悪さを残す。
悪意や犯罪で彩られたストーリーであるのに、出てくる映像は日常を映し出しているだけだ。

 

ろくでもない人物がおくる淡々とした日常と、コミカルささえ感じる犯罪へのチャレンジは、あまりに現実的すぎてぞっとする。

 

メッセージを受け取ったレックスの頭の中は、彼女を救いたいというのを通り超えて、視聴者と同じ状態になっている。
彼女にいったい何が起こったのか――。
ラストの行動は、それが知りたい一心から出たバカな行動。
レックスにとって、何より恐ろしいのは、このまま真相がわからなくなってしまうことだった。

 

誇張した雰囲気や緊迫感をあおるような音楽など無く、まるでドキュメンタリーを見ているような、奇妙なサスペンスだ。

 

見終わた後残るのは、登場人物たち全員に掛ける問いかけ。
何で?
何でそんな行動をとったの?

 

彼も彼女も犯人も。
ラストにきて、ポンと放り出されたような戸惑いと気持ち悪さを残す、どちらかというと胸糞悪ジャンルに入る映画だった。