もくれんの映画と読書日記

趣味のかたよった読書と映画鑑賞の日記です。

つい聞き入ってしまい結果見入ってしまった映画「12人の優しい日本人」

正直、三谷幸喜の映画はほとんど見たことがなかった。
ドラマはほぼ全部楽しませてもらっているが。
きっとそういう人少なくないだろう。

 

 

家族がこの映画をDVDで見始めたその同じ部屋で、自分はパソコンに向かって違うことをしていた。
映画をBGMにしてしまうという申し訳ないクセは、幼少期、テレビ垂れ流し祖父母の家に出入りしていた時から身に付いたものの1つだ。

 

見る気のない映画に限るけど。
この映画も、三谷さんには申し訳ないけど見る気なかった。
というのも、この映画は1950年代のハリウッド映画「12人の怒れる男」のパロディ・オマージュ作品であるということで、まだそちらの方を見ていなかったからだ。
やはり見てから挑みたい。

 

 

サスペンス映画の名作として知られているこの映画は、ほぼ一室で展開されていく密室劇で、今では似たようなものも多くあるが、当時は斬新だったのだろう。

 

ある1つの事件を審議することになった陪審員たちの議論だけで構成されている内容。名前を含め、彼ら自身のことは何も語られず始まっていくのだが、議論が進むにつれそれぞれの特徴や性格など個性があらわになっていく。

 

三谷作品の方も、基本的な設定はほぼ同じ。この作品も1991年の作品ということで、そもそも陪審員制度が日本ではまだなかった頃の話。

 

ある殺人事件を論議するために集まった12人は、とりあえずとっとと済ませて帰りたいということで、早々に「無罪」という結論を全員一致で出し帰り支度を始める。しかし、その中で一人の男が「もう少し議論しませんか」と提案を出したことから、その後延々続く白熱議論が始まった。

 

だんだんと聞き流しから、聞き入る状態になってしまったのは、まず一室ということで画面をそんなに見なくてもよかったことがある。登場人物たちも始めからどこの誰だかわからず、顔の確認をする必要もない。

 

ストーリーは、彼らが事件をもう一度しっかり見直していくことによって、さまざまな見方や意見が飛び交いだす。私情を絡めてくる者や、すっとぼけたことばかり言う者、普段議論に馴れていない一般人の彼らの戸惑いや思考のやりとりが絶妙に面白い。
次第に彼ら自身の個性があぶり出されていく。

 

すっかりパソコンの手は止まり、テレビの方を向いていた。
中心になる人物は相島一之。鎌倉殿で運慶の役、新選組では新見錦を演られていたあの方です。

 

途中でむくれ始めるおっさんに鎌倉殿の善治さん。なんと豊悦も出てる。魅せる方ばかりなので、これは惹きこまれるわ。
ということで、しっかりと最後まで見入りました。

 

この映画は「無罪から有罪の可能性に向かって審議されていく」のに対し、元の映画の方は「有罪から無罪の可能性を探っていく」内容で、まったく逆の方向から始まるらしい。

 

優しい日本人の方は、事件そのものよりも陪審員の人そのものを描いている人間ドラマのように思えるが、元映画の方はどうなのだろう。サスペンスということで事件そのものをメインにしているのだろうか。
これは見たくなりますな。

 

うちの旦那はコロンボが好きなので、けっこうBGMになることが多いが、見入ってしまったことは一度もない。(最初からちゃんと見たことはあります)
面白くないわけではないのだけど、結局始まりを見逃すと、もうわけわかんなくなる。それがまあ普通で。
言葉で聞かせる魅力が最大限に発揮される密室劇の所以だ。