またまた謎かけのような題名で。
前作「彼と彼女の衝撃の瞬間」同様、特にストーリーとは関係ないんじゃないかと思ったが、「ああそういうことか」とすぐにわかった。彼は相貌失念という脳の障害を持っていて、人の顔が認識できないのだ。
そんな彼(アダム)と彼女(アメリア)の夫婦は、結婚生活に危機を迎えていた。カウンセラーの勧めもあり、2人で旅行に出かける。
それは人里離れた古いチャペルを改造した不気味なホテル。しかも、大雪に見舞われ携帯も通じない、隔絶された状況に。
この2人に起こる奇妙な出来事を中心にして語られるので、物語展開も把握しやすく、登場人物もとても少なく、海外ものにつきものの「えー、誰だっけかあ」というイラつきも無い。
ドアがいつの間にか空いていたり、窓から人の顔が見えたりと、怪談じみたシンプルな出来事からじょじょにミステリーぽさが加えられていくのだが、とにかく読みだすとなかなか止まらない。
「本日はここまで」と思っても、各章が絶妙なところで途切れるので、気になって目がもう次の章の上をたどっている。それが延々と続くので、予想以上に早く読み終えた。
この小説はアダムとアメリアを中心とした目線から交互に語られる。加えてチラチラと出てくる謎の人物も気になる。
現在進行の教会での出来事と、ストーリー中に挟まれる出されることのなかった彼女の秘密の手紙により、夫婦が出会ってから壊れていくこれまでの物語が読者にもわかってくる。
その辺りがちょっとダラダラ気味でだるいという向きもあるようだが、読みやすいので気にならないし、彼と彼女の性格や心境をそこで把握しないと、後半待っている驚きの展開を楽しめない。
この夫婦、修復するのかしないのか、
どこに着地するんだこの話、
そこで明かされる真相に「おー、そうきたかあ、やりやがったなあ」と大喜び。
仕掛けが解明されてからも、細かいどんでん返しが散りばめられているので、ラストまで楽しめた。本格推理的なものではなく、怒涛のサスペンスなのでスピード感もあって恋愛がらみでグロさのないミステリーが好みの方にはおすすめかも。