アメリは小ジャレた女性が好きなイメージだったので、絶対合わないだろうなあと思って気になりつつも見なかった。
で、この年になってようやく鑑賞して、それはそれでよかった。
フランス映画は途中で寝てしまう確率が非常に高いが、この映画はしっかりラストまで見れた。出てくるのは変なキャラクターばっかりで、作りもの感いっぱいで面白いのに、変な現実感も感じる。
主人公のアメリも空想好きなちょっと変わった感性をもった女の子で、変化にとんだストーリーを持った映画ではなく、彼女の独特な日常感を楽しむ映画だ。
まるで童話のような展開にも関わらず、けっこう刺激的な大人の部分もあって、引き付けられる。
幸せな気持ちになれる映画というウリどおりに、確かにほのぼのした気分で終われる。変人でいてもいいんだなあと、元気づけられる。
偶然連続的に日常系な内容の「土を喰らう十二ヶ月」を見た。
土井先生がご飯を手掛けていると聞いて、土井先生のご飯大好きなので、ひたすらそれだけを楽しみに見た。
若い編集者との恋愛事情みたいなものがもっと主軸になっているのかと思っていたが、予想以上に淡々としている内容でよかった。
自然に囲まれた深い山で、山の恩恵を受けながら日々精進料理を作って食べて一人で暮らす初老の作家。美しい日本の自然の風景と、土に育まれた食べ物たちに、とりあえずうっとりしながらお腹を鳴らす。
料理を見せるというより、日本の風土やしきたり、暮らしが主軸になっている。ひたすら作家の日常を周りの人たちとの短いエピソードを絡めて描いているだけの、ほんとにBGMみたいな映画。
しかし後半は、作家本人が倒れてしまったことをきっかけに、死というものが主軸になっていく。死ぬこと、生きることを日常レベルの中でしっかりと植えつけられる。おそらくこの映画を見る年代によって、インパクトやイメージは変わってくると思う。
少し先に作家の世代に入っていくだろう自分にとっては、親のことや自分自身のことなど、けっこうリアルにズドンとくる部分は多い。
世情的にも、年齢的にも、人との考え方の違いを実感し、「生きづらいなあ」と昨今感じている日々だったので、この二つの映画は、自分らしく生きてもいいんだなあとちょっと背中を押してもらえた。
でも作家の生き方は、見方によっては悠々自適という贅沢なものだとも思うが。
ほぼ音のない映画だったので、エンディングロールで主題歌が流れた時、うわあジュリー!と、老作家との違和感が炸裂したが、でも歌詞を聞いてるとちょっとジンとくるいい歌だった。
そうだなあ、いつかさよならを言わなくてはいけないのだなあ。今当たり前のように側にいて笑ったりしゃべったりしてる人たちと、さよならをしなければいけないときが必ずやってくるんだなと。
泣ける映画ではなかったけど、その歌を聞いて、数十年前に棺桶の中のおじーちゃんに向かって「おじーさん、さいなら!」と元気よく最後の挨拶をした我がおばーちゃんを思い出した。
挨拶されるより挨拶する側の方がきっとツライだろうから、友達とかの中では早いうちに死にたいが、旦那には挨拶する側に立ってやらなきゃいけないんだろうなあ。