もくれんの映画と読書日記

趣味のかたよった読書と映画鑑賞の日記です。

小説と映画で「64」の世界再び!

この映画が公開されたのが2016年ということで、もう7、8年くらい前になるのだけど、出演者の顔ぶれがとにかくすごいので、見たいとは思っていた。

 

 

見よう見ようと思いつつ、その前に原作を再読しておさらいをしようとしていたが、これも読もう読もうと思いつつ、長い年月がたちました。

 

先日古本フェアで偶然見つけたとても状態の良い「64」。前回読んだのは確か図書館の予約待ちだったので、手元になかったのだ。

 

 

しかし、読み始めたものの「え、ほんとにこれ読んだっけ…?」と不安になるほど覚えていない。横山秀夫のこの名作を読んでいないわけがない。

 

でもするすると行ってしまうほど面白い。下巻に突入して、後半からラストの下りでようやく思い出した。事態がリアルに動き出し臨場感とテンポに圧倒されているうちに、切ない感動のラストが待ち受ける。

 

この物語の前半は、警察内の警務部と刑事部の確執と争いを中心に展開していく。14年前の誘拐殺人事件の詳細以外は派手な展開がなく、警務部の広報官という地味な主人公の三上と、記者たちとの確執、小憎らしさ満載の上司の存在など、「どうなるんだろ、この人たち」と警察という特殊な世界の内情が興味深くとても面白い。

 

以前読んだときの感覚と、今とでは違うのだろう。だからおそらく前半部分をまったく覚えていなかったのだ。

 

 

で、満を持しての映画鑑賞なのだけど、けっこう原作に忠実で見やすかった。とはいえ、映画は原作に忠実であれば面白いのかというとそうではなく、映画でしか出せない表現があるので、この映画も忠実でありながら原作では淡々としていた人物どうしの関わりや距離感が縮まっていて、それはそれで盛り上がって良かった。

 

ラストは原作とは違う展開になっていたが、違うというより治まったという感じ。きっとこうなってくれるだろうという期待みたいなものが描かれていて、作りごと感になってはいるけど、それはそれなりにすっきりした。

 

初めて読んだ時と違って、今は後半の新たな事件よりも、記者たちと警察とのリアルな現場の迫力と臨場感が印象に残った。

 

「現場を知らない」とか「キャリア」とか「他県や警視庁との確執」みたいなことをドラマや小説で耳にはするが、警察の中のことなんて具体的にはよくわからないのがほんとのところ。

 

元記者だったからこそ描ける臨場感と内情が、まさに横山秀夫の真骨頂だと感じた。再読してよかった。若い頃に読んだわけではないのに、日々人の気持ちや感じ方って変化しているのだなあと、つくづく思う。